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もう元の世界には戻れない...トランプ流ディストピアで始まった「新たな世界史」の行き着く先は?

AMERICAN SUICIDE

2025年4月14日(月)16時16分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)
丸まったアメリカ国旗

「アメリカ・ファースト」は孤立主義の再来ではなかった IVAN ABREUーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<「西側」の消滅とアメリカのリーダーシップの崩壊で、超大国による椅子取りゲームが始まった──>

トランプ米大統領がホワイトハウスに舞い戻ってからまだ3カ月だというのに、世界は根本から変わってしまった。

トランプは、第2次大戦後にアメリカが確立に貢献した自由貿易体制を急速に弱体化させている。高率関税を課して米経済を「解放」しようとする彼の試みは、第1次政権の控えめな貿易戦術と本質的に変化した。


エール大学予算研究所の試算によると、アメリカの平均関税率は1909年以来の最高水準にある。

トランプは長年の同盟関係、とりわけNATOとその安全保障に疑念を抱いてもいる。2月末にはホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領を公然と侮辱。以後アメリカのウクライナ支援は事実上終了し、ロシアのプーチン大統領はここ数年で最も有利な立場を手に入れた。

トランプは自由と主権のために戦ってきた苦難の民主国家ウクライナよりも、侵略者であるロシアへの同情を隠そうともしない。

さらにはアメリカがパレスチナ自治区ガザを支配して、その地をリゾートにする計画を提案。カナダやグリーンランド、パナマ運河を手に入れるとも言い続けている。

トランプがこれほど厚かましい帝国主義を取ると予想する者はほとんどいなかった。識者らは長い間、トランプが掲げる「アメリカ・ファースト」は第2次大戦前の孤立主義の再来だと解釈してきたが、どうやら違ったようだ。

彼はひと握りの超大国が資源や支配圏をめぐって争う──必要であれば暴力で──世界を望んでいる。

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例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

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