メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」先送りで
2月3日、メキシコのシェインバウム大統領(写真)は、トランプ米大統領が表明していた輸入関税の発動時期を延期させることに成功し、外交面で就任以来最大の試練をひとまず乗り切ったようだ。同日、メキシコ市で撮影(2025年 ロイター/Raquel Cunha)
メキシコのシェインバウム大統領は、トランプ米大統領が表明していた輸入関税の発動時期を延期させることに成功し、外交面で就任以来最大の試練をひとまず乗り切ったようだ。
シェインバウム氏は3日、トランプ氏が問題視する合成麻薬「フェンタニル」の米国流入防止に向け、国境地帯に治安要員1万人を即座に派遣して国境管理を強化することで、トランプ氏から25%の関税実施時期を1カ月先送りする合意を引き出した。
複数の専門家やメキシコの政治家らは、シェインバウム氏が公的な場で落ち着いた言動に終始し、トランプ氏をなだめすかす能力を示したことを賞賛する声が相次いだ。
元駐中国大使で野党に属するホルヘ・グアアルド氏は「シェインバウム大統領はとても巧みに行動した」とソーシャルメディアに投稿し、他国の指導者はシェインバウム氏をお手本にするだろうと付け加えた。
ワシントンのシンクタンク、ウィルソンセンター・メキシコ研究所ディレクターのリラ・アベド氏は「シェインバウム氏はトランプ政権に対して非常に慎重かつ戦略的なアプローチを採用した」と分析。ここ数カ月のメキシコ当局によるフェンタニル押収量が急増し、昨年12月に過去最大規模に達したことが、対米交渉で追い風に働いたとの見方を示した。
アベド氏は「シェインバウム氏は、トランプ政権がフェンタニルと組織犯罪への対処を最優先課題だと見なしていると理解をしている、という明確なシグナルを送るメキシコ政府の方針に沿って動いてきた」と述べた。
ただアベド氏は、関税実施先送りはあくまでシェインバウム氏にとって「一時的な勝利」で、今後どうなるかは移民と治安の分野ですぐに成果を生み出すことができるかどうかに左右されるとくぎを刺した。
別の米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が3日にX上で開いたライブイベントに参加したメキシコの政治学者、デニス・ドレッサー氏も「シェインバウム氏は(トランプ氏の)関税発動表明を受けても非常に慎重な姿勢を保った」と評価しつつ、メキシコはまだ難局を乗り切ったわけではなく、関税による「主要な敗者」になる立場は続いていると警告した。
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