最新記事
メキシコ

メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」先送りで

2025年2月4日(火)12時12分
メキシコ・シェインバウム大統領

2月3日、メキシコのシェインバウム大統領(写真)は、トランプ米大統領が表明していた輸入関税の発動時期を延期させることに成功し、外交面で就任以来最大の試練をひとまず乗り切ったようだ。同日、メキシコ市で撮影(2025年 ロイター/Raquel Cunha)

メキシコのシェインバウム大統領は、トランプ米大統領が表明していた輸入関税の発動時期を延期させることに成功し、外交面で就任以来最大の試練をひとまず乗り切ったようだ。

シェインバウム氏は3日、トランプ氏が問題視する合成麻薬「フェンタニル」の米国流入防止に向け、国境地帯に治安要員1万人を即座に派遣して国境管理を強化することで、トランプ氏から25%の関税実施時期を1カ月先送りする合意を引き出した。


 

複数の専門家やメキシコの政治家らは、シェインバウム氏が公的な場で落ち着いた言動に終始し、トランプ氏をなだめすかす能力を示したことを賞賛する声が相次いだ。

元駐中国大使で野党に属するホルヘ・グアアルド氏は「シェインバウム大統領はとても巧みに行動した」とソーシャルメディアに投稿し、他国の指導者はシェインバウム氏をお手本にするだろうと付け加えた。

ワシントンのシンクタンク、ウィルソンセンター・メキシコ研究所ディレクターのリラ・アベド氏は「シェインバウム氏はトランプ政権に対して非常に慎重かつ戦略的なアプローチを採用した」と分析。ここ数カ月のメキシコ当局によるフェンタニル押収量が急増し、昨年12月に過去最大規模に達したことが、対米交渉で追い風に働いたとの見方を示した。

アベド氏は「シェインバウム氏は、トランプ政権がフェンタニルと組織犯罪への対処を最優先課題だと見なしていると理解をしている、という明確なシグナルを送るメキシコ政府の方針に沿って動いてきた」と述べた。

ただアベド氏は、関税実施先送りはあくまでシェインバウム氏にとって「一時的な勝利」で、今後どうなるかは移民と治安の分野ですぐに成果を生み出すことができるかどうかに左右されるとくぎを刺した。

別の米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が3日にX上で開いたライブイベントに参加したメキシコの政治学者、デニス・ドレッサー氏も「シェインバウム氏は(トランプ氏の)関税発動表明を受けても非常に慎重な姿勢を保った」と評価しつつ、メキシコはまだ難局を乗り切ったわけではなく、関税による「主要な敗者」になる立場は続いていると警告した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中