最新記事
日本社会

東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか

2025年1月29日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

こうした生活条件の違いは、子どもの教育達成にも影響する。筆者の手元に、東京都が独自に実施している学力調査の地域別の結果表がある。小学校5年生の算数の平均正答率を、先ほど計算した年収中央値と絡めてみると<図2>のようになる。

newsweekjp20250129021249-35b05a3c450d8d31034c17a313341e2f4e2bce67.png


年収が高い区ほど、子どもの学力水準が高い傾向にある。相関係数は+0.8337とかなり高い。通塾や習い事の費用負担能力といった経済資本は、子どもの学力、どの段階の学校まで進めるかという教育達成に影響する。それは当然、自宅の蔵書数や保護者の勉学嗜好といった文化資本とも重なる。<図2>のような相関関係が出るのは頷ける。
   
散布図の横軸を見ると、同じ東京23区でも、子育て世帯の年収には大きな地域差があり、それが子ども世代の「教育格差」に転化してしまっている。東京都はこういう問題を認識しているのか、保育や私立高校の学費無償化といった政策に熱心だ。

だが、公費による一律無償化というのは、富裕層の優遇という側面も持っている。格差是正の政策の基本は、持たざる側を優遇することだ。所得制限をつけ、浮いた財源で低所得層への支援を手厚くする制度設計も求められる。

<資料:東京都『とうきょうこどもアンケート』(2024年)
    東京都教育委員会『児童・生徒の学力向上を図るための調査』(2019年)>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、5対4の僅差 12月利下げの

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中