トランプのおかげで「プーチンの夢」が叶う?...再来するトランプ・ワールドの外交・内政・経済を徹底予測

NASTIER AND MORE BRUTAL

2025年1月17日(金)14時00分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

メキシコ国境で移民の強制送還を訴えるトランプ

メキシコ国境で移民の強制送還を訴えるトランプ(24年) REBECCA NOBLE/GETTY IMAGES

何事もゼロサムゲームとわきまえるトランプは2国間の交渉を好む。

もしもウクライナとロシアの戦争に関して、トランプがウクライナの頭越しに、ロシアの大統領ウラジーミル・プーチンとダイレクトに交渉を始めたらどうなるか。それでもウクライナへの支援を続けるか、ロシアへの経済制裁を維持するか、欧州諸国は難しい政策判断を迫られるだろう。もともとロシア寄りのハンガリーとスロバキアは、NATOと決別する道を選ぶかもしれない。


EU(欧州連合)も結束を保つのに苦労するだろう。関税を「辞書の中で最も美しい言葉」と呼んではばからないトランプは、EU加盟国にも個別に「報復」的な関税その他の制裁を課すと脅している。

アメリカから見て「不公正」な貿易慣行や貿易収支の不均衡、さらにはデンマーク領グリーンランドの売却拒否も報復関税発動の理由となり得る。そうやって揺さぶられると、EU諸国の結束にもほころびが生じかねない。

【関連記事】トランプの「領土奪取」は暴論にあらず。グリーンランドとパナマ運河はなぜ放置できないのか

■2国間関係の「肝」は中国

2国間関係で最重要なのは中国との関係だ。既に険悪だが、さらに悪化する恐れがある。トランプはアメリカの雇用と産業を中国が「盗む」のを阻み、米中貿易の不均衡を是正するために中国からの輸入品全てに60~100%の関税を課すと豪語しているが、実際には品目ごとの取引になるだろう。

品目によって一定の輸入量は許容する可能性がある。あるいは、双方が勝利宣言できる程度の経済協定を結んで、根源的な貿易不均衡や安全保障の問題にはふたをするという選択肢もある。

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