アサド政権崩壊で、もうシリア難民に保護は不要?...強制送還を求める声に各国政府の反応は?

Do Syrian Refugees Still Exist?

2025年1月15日(水)14時17分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

強制送還は条約違反

さらに人権活動家らは、保護されるべき資格を持つ人々を国外退去処分にすれば、さまざまな問題が生じると主張する。その人々には、国や地域の法律や国際法に由来する保護が重なり合うように提供されているからだ。

彼らを強制送還すればいかなる形でも、1951年の難民条約の「ノン・ルフルーマン原則」(難民を迫害の危険に直面する国へ送還してはならないという原則)に違反する。難民の資格は満たさないが、母国に戻れば迫害を受ける恐れのある「補完的保護」の対象者も、EUの人権憲章で保護されている。


「ドイツにいるシリア人の大半は保護資格を持っている」と、コップは言う。「だが強硬派は、ドイツ社会に溶け込んでいるシリア人はそのままでもいいが、犯罪者や社会福祉に依存している人々は帰国させるべきだと考えている」

ドイツの大半の政党も、犯罪歴のある移民は帰国させるべきだという見解で一致している。2月の総選挙で第1党になると予想されるCDUはさらに踏み込み、補完的保護制度の撤廃を提案している。

アサドとその体制が消えたため、保護を求める(あるいは提供する)理由はなくなったという考えがドイツでは広まっている。アサド政権は獄中での拷問などの人権侵害を行っていたと非難されており、多くのシリア人が亡命を求める理由はここにあった。

「国外に逃れる理由がもはや存在しない以上、帰国は可能なはずだ」と、CSU議員のドブリントは言う。

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