最新記事
考古学

古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体

Mysteries of a Cup

2025年1月9日(木)18時10分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)

newsweekjp20250109050732-7da78c3830d104883389edca3bf8b8ac54f1ee8b.jpg

ベス神の頭部をかたどったカップの残留物の成分が明らかに CASSIDY DELAMARTER

「ベス神のマグカップは、これまで具体的な用途が解明されていなかった。しかし今回の研究では最先端の技術を駆使して、この容器の用途と意味を解明できたと思う」

この容器の用途については従来から多くの仮説が立てられていた。だがいずれも古代エジプトの儀式に関する図像資料や伝承に基づく仮説であり、容器に残存する有機物の痕跡の検証はほとんど行われてこなかった。


プレスリリースでは論文の共同著者でタンパ美術館のギリシャ・ローマ部門キュレーターを務めるブランコ・バンオッペンが、「この容器で何を飲んでいたのか、その目的が日常的なものなのか宗教的なものなのか、あるいは何らかの魔術で使われていたのか。そこは分かっていなかった」と述べている。

今回の研究では容器の内側から採取したサンプルの化学的分析とDNA解析を行い、残留物の成分を調べた。結果、容器に入っていたのはプトレマイオス朝のエジプトで儀式に使われていたとみられる液状の混合物であることが明らかになった。

幸せな気分になる物質

検出された有機物の残滓にはペガヌム・ハルマラ(通称ハルメル。「シリアンルー」とも呼ばれる)という植物の痕跡が含まれていた。ハルメルは薬効および向精神作用を持つ植物で、種子に大量に含まれるハルミンとハルマリンというアルカロイドは幻覚症状を引き起こすことがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ウォラーFRB理事、次期議長の適性に自信 12月利

ワールド

中国主席がトランプ米大統領と電話会談=新華社

ワールド

欧州、ウクライナ支援継続 和平協議の新たな勢いを歓

ワールド

ウクライナ和平交渉団帰国へ、ゼレンスキー氏「次の対
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中