最新記事
韓国

尹大統領はどこまで「読めていた」のか? 計画的かつ無謀な戒厳令の「裏側」...死刑の可能性も

A DICTATOR AT HEART

2024年12月14日(土)17時04分
イ・ユンウ(ライター)
韓国の尹錫悦大統領はなぜ戒厳令に踏み切ったか

戒厳令が宣布されると、国会の入り口を警察が封鎖し、軍の車両も出動した KIM JAE-HWANーSOPA IMAGESーREUTERS

<かつての韓国の独裁者に憧れた男・尹錫悦大統領が訴えた、最終手段としての非常戒厳。暴挙の兆候は何カ月も前から表れていた>

12月3日夜、ソウルはとびきり寒かった。龍山周辺は不気味なほど静かで人通りもまばらだった。韓国大統領府から程近い一角にあるパブでは、スーツ姿のビジネスマンや観光客が夜遅くまで語らっていた。

まさにその時、歩いて5分足らずの場所で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「恥知らずな親北朝鮮の反国家勢力を根絶する」として非常戒厳(戒厳令)を宣布していたことを知っても、にわかに現実とは思えなかった。


私も含め誰もが会話に夢中で、この重大で荒唐無稽な発表に気付いていなかった。知人から心配するメッセージが届き始め、軍のヘリコプターや装甲車、特殊任務部隊が国会に急行しているというニュース速報が携帯電話に表示された。つい先ほど、パトカーや消防車がサイレンもライトも消して走っていった不思議な光景が、ようやく腑(ふ)に落ちた。

とっさに絶望を感じ、続いて不愉快な思いが湧いてきた。私たちは直視したくなかったけれど、心の奥では尹ならやりかねないと誰もが分かっていたのだ。彼の凝り固まったイデオロギーと性格、そしてここ数カ月の政権の怪しい動きを思えば、兆候はいくつもあった。

尹は、韓国を独裁体制に引きずり込んだ初代大統領、李承晩(イ・スンマン)を尊敬している。国民の反対をよそに李の記念館建設を何度も試みている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送イラン、イスラエル報復攻撃開始 数百発のミサイ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、中東緊張で安全資産に資金流

ワールド

米軍、ミサイル撃墜でイスラエルを支援=当局者

ワールド

ロシア大統領、イスラエル・イラン首脳と個別電話会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 7
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中