最新記事
韓国戒厳令

韓国大統領の退陣圧力強まる、野党は4日にも弾劾法案 戒厳令騒動受け

2024年12月4日(水)11時06分
戒厳令騒動の夜のソウル

韓国の尹錫悦大統領は4日、3日夜に発令した戒厳令を解除する方針を発表した。同日撮影(2024年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の尹錫悦大統領が3日夜に発令した戒厳令を4日早朝に解除すると表明したことを受け、国会議員らは大統領の弾劾を呼びかけている。野党議員らは、弾劾法案を4日中に提出し、72時間以内に採決する考えを示した。

野党の黄雲夏議員は記者団に「国会は大統領の職務を即時停止し、弾劾法案を早急に可決することに集中すべきだ」と強調した。

尹氏は3日夜の緊急テレビ演説で、野党が国を危機に陥れていると非難した上で、「反国家勢力」を撲滅するとして戒厳令を宣言。これに反発した国会は議員300人のうち190人が出席して解除要求決議を採決し、全員の賛成で可決していた。

聯合ニュースによると、政府は4日早朝の閣議で戒厳令解除を決定した。戒厳令は1980年以来で初めて。

国会前では抗議していた人々が「われわれは勝利した」などと声を上げた。最大野党の「共に民主党」は大統領に辞任を要求し、拒否すれば弾劾に直面すると警告した。

同党の朴賛大院内代表は「戒厳令が解除されても、国家反逆罪は免れない。尹大統領がもはや国を正常に運営できないことは全国民に明らかになった。辞任すべきだ」と主張した。

聯合ニュースとニューシスは、尹錫悦大統領の秘書室長や首席秘書官らが一斉に辞意を表明したと報じた。

ネイバーやLGエレクトロニクスなど一部の企業はこの日、従業員に在宅勤務を推奨した。

企画財政省は4日、戒厳令宣布を巡る混乱を受け、必要であれば「無制限」の流動性を金融市場に注入する用意があると表明した。崔相穆企画財政相と李昌ヨン・韓国銀行(中央銀行)総裁が緊急に会合した。また、同日午前9時(日本時間同)から中銀臨時会合が開かれた。

4日のソウル株式市場の総合株価指数(KOSPI)は、約2%下落して取引を開始。一方、通貨ウォンは一時2年ぶり安値を付け、その後は1ドル=1418ウォン前後で推移している。

尹氏は支持率が20%前後と低迷しているほか、同氏が率いる与党「国民の力」は4月の総選挙で大敗し、野党が国会の多数を握っている。

ブリンケン米国務長官は、尹氏の戒厳令撤回を歓迎し、「政治的な意見の相違が平和的に法の支配に従って解決されることを引き続き期待している」と述べた。

米ホワイトハウスの報道官は「尹大統領が戒厳令を撤回し、国会の戒厳令解除の決議を尊重したことに安堵している」と述べた。

米シンクタンク、アジア・ソサエティ政策研究所の副所長で、オバマ政権で東アジア担当の高官を務めたダニー・ラッセル氏は「韓国は国家として危機を回避したが、尹大統領は自ら足を撃ってしまったかもしれない」と述べた。

また、総選挙が前倒しになる可能性もあると指摘。「韓国の政治的不安定と国内対立はわれわれにとって好ましいことではないが、北朝鮮にとっては好都合だ。北朝鮮が舌なめずりしていることは間違いない」と語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUがウクライナ産の小麦と砂糖に輸入枠、最大で80

ワールド

サウジ、ガザ恒久停戦を優先と外相 イスラエルとの関

ワールド

関税に関する書簡、米東部時間7日正午から送付開始=

ビジネス

エールフランスKLM、スカンジナビア航空への出資率
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中