最新記事
中東情勢

イスラエルへのTHAAD供与、運用部隊100人同行で「アメリカが戦争に巻き込まれる」リアルリスク

Ex-colonel issues warning over American troops in Israel

2024年10月15日(火)19時04分
ブレンダン・コール
THAAD

イランの弾道ミサイル攻撃対策でアメリカがイスラエルに送るTHAAD。運用のために米軍100人がついていく(2013年9月10日、北マリアナ諸島) Photo by U.S. Army via ABACAPRESS.COM

<派遣された米兵がイランの報復攻撃に巻き込まれれば、アメリカはイスラエルと共に反撃せざるをえない>

米国防総省は10月13日、イランによる攻撃の可能性に備えて、イスラエルに米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)とその運用部隊100人を米軍から派遣すると発表した。これについて元米空軍大佐のセドリック・レイトンは米CNNの取材に対して、イスラエルに派遣された米部隊に対する攻撃があれば、アメリカが中東での紛争に巻き込まれる危険があると指摘した。

中東では10月はじめにイランがイスラエルに向けて約200発の弾道ミサイルを発射して以来、緊張が高まっている。イスラエル軍はこれらの弾道ミサイルのほとんどを迎撃し大きな被害はなかったものの、一部が空軍基地を含むイスラエル領内に着弾したと述べた。

レイトンは、THAADは短距離や中距離の弾道ミサイルに対抗する進んだシステムで、大気圏内だけでなく大気圏外でも迎撃できる。イスラエル防空の3本柱である「ロケット弾迎撃用アイアンドームとダビデ・スリング(ダビデの投石器)、そして弾道ミサイル迎撃用アローシステム」を補強するものになるだろうと述べた。一方でアメリカから派遣されるTHAAD運用部隊にはリスクが伴うとも指摘。CNNに対して、もし米兵が「いかなる形であれ危害を受けた場合にはアメリカが戦争に巻き込まれる可能性があり、それは現時点で想像し得る以上の重大な結果をもたらす可能性がある」と述べた。

地域戦争へ拡大の懸念

米国防総省は本誌の取材に対し、13日に発表した声明を引用してTHAADは「イスラエルの防空システムを強化」してイランによるさらなる弾道ミサイル攻撃からイスラエルを防衛し、イスラエルにいる米市民を守るという揺るぎない決意を強調するものだと述べた。

また国防総省は声明の中で、アメリカは2023年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃した後と、それ以前にも2019年に演習目的でTHAADをイスラエルに配備しており、これが初めてではないと述べた。

こうしたなか14日には、イスラエルがレバノン北部の町アイトゥを攻撃。レバノン当局者らは、この攻撃で少なくとも18人が死亡したと発表した。1年前から続く対立の中で、キリスト教徒が多く暮らすレバノン北部がイスラエル軍の標的にされたのは初めてだ。

イスラエルはイランと親密な関係にある複数の高官を標的にしており、9月末にはレバノンの首都ベイルートでヒズボラの指導者ハッサン・ナスララを殺害した。イスラエルがレバノン各地への攻撃を続けるなか、イランによる報復や地域戦争への拡大に対する懸念が高まっている。14日夜にはイスラエル北部のハイファ南方にあるイスラエル軍の基地がヒズボラによるドローン攻撃を受け、イスラエル兵4人が死亡した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中