最新記事
イスラエル

ヒズボラ指導者の殺害という「勝利の美酒」に酔うネタニヤフ首相だが、政権の足元は「崩壊」寸前

The Glow of Temporary Triumphs

2024年10月10日(木)17時34分
デービッド・ローゼンバーグ(イスラエル紙ハーレツの英語版コラムニスト)
ヒズボラ指導者ナスララ暗殺を喜ぶネタニヤフだが

イスラエルのネタニヤフ首相はあくまでも強気(9月27日、ニューヨークでの国連総会で) EDUARDO MUNOZーREUTERS

<ヒズボラ最高指導者ナスララの暗殺成功は、危機的状況にあったネタニヤフ政権に一時の勝利をもたらしたが、イスラエル世論の支持はなく経済も悪化の一途>

イスラエルがレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師を殺害(9月27日)したことで、胸をなで下ろしたイスラエル人はたくさんいる。だが一番喜んだのは、おそらく首相のベンヤミン・ネタニヤフだ。長い政治家人生で最も困難な1年が過ぎようという時に、降って湧いた歓喜の瞬間だったと言っていい。

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが昨年10月7日に仕掛けた残忍な奇襲攻撃を、彼は防げなかった。そのことの汚点は、いくら頑張っても消せない。一方でレバノンに陣取るヒズボラとの交戦に終わりは見えず、ガザに残る多数の人質を無事に救出できる見込みもないままだ。


世論調査を見ても、ネタニヤフに国を率いる能力ありとする人はほとんどいなかった。総選挙をやれば、彼の率いる宗教右派連立政権は負ける確率が高かった。

しかし9月17日にはポケベルの遠隔操作でヒズボラ構成員多数を殺害するという劇的な成果が上がり、その10日後には指導者ナスララの命も奪えた。自分こそイスラエルの「安全を守る男」だと自負してきたネタニヤフの面目躍如──と言いたいところだろうが、そうはいかない。

ナスララ殺害の成功を受けて右派政党「新たな希望」の党首ギデオン・サールが政権への復帰を表明したおかげで、ネタニヤフ率いる連立与党の議席数は68となり、国会の過半数は維持できた。しかし、安心するのはまだ早い。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスから人質遺体1体の返還受ける ガ

ワールド

米財務長官、AI半導体「ブラックウェル」対中販売に

ビジネス

米ヤム・ブランズ、ピザハットの売却検討 競争激化で

ワールド

EU、中国と希土類供給巡り協議 一般輸出許可の可能
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中