最新記事
台湾

台湾「第3の党」トップまさかの逮捕で広がる混乱...「クリーンで若者に人気」柯文哲に何があったのか?

Dramatic Corruption Claims

2024年9月9日(月)15時14分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

民衆党が唱える謀略説

一方、黄珊珊は政治資金の不記載で詰め腹を切らされたにもかかわらず、柯からは今なお重用されているようだ。柯の妻が釈放された際に出迎えに行ったのは黄だった。

柯自身も、釈放後に帰宅する前にまず黄の家に向かった。こうしたことからも、黄がまだ民衆党内で重要な役割を担っていることがうかがえる。


柯は、今後さらに罪に問われる可能性もある。投資計画がなかったにもかかわらず、台湾の新光集団に北投士林科技園区の2区画の購入を許可した疑いも持たれている。

民衆党の副総統候補だった呉欣盈(ウー・シンイン)が新光集団の経営者一族の出身であるため、政治的な便宜を図った可能性もある。

さらに疑惑を持たれているのが、台北万華区にある青果卸売市場プロジェクトだ。同事業には京華城の関連企業が関与している。

さらに柯は、選挙補助金を台湾議会に近い場所にある高額な事務所の購入費に流用したとみられており、非難を浴びている。民進党の頼清徳(ライ・チントー)と国民党の侯友宜(ホウ・ヨウイー)は、総統選後に補助金を党に返還するか、慈善団体に寄付している。

柯の妻に対しては、民衆党本部が入っている建物内でカフェを開く資金を得るため、息子名義で不正融資を受けた疑いも浮上している。

さらに民衆党は、柯の渡米に際してレンタカー費用として約90万台湾ドルを使った疑いでも批判の的になっている。

こうした非難の嵐が吹き荒れていることを考えると、柯の今後は不透明だ。

台湾で有罪の可能性に直面している著名な政治家は柯だけではない。民進党で重職を担っていた鄭文燦(チョン・ウエンツァン)は、先の総統選で候補の座を頼と争っていたが、その後、失脚。収賄罪で12年以下の懲役刑を受ける可能性に直面している。

今の台湾では、民進党を中心とする「泛緑」陣営にも国民党を中心とする「泛藍」陣営にも、検察の捜査対象となった政治家がいる。検察としても世論は気になるから、特定の陣営に肩入れしているような印象は与えたくない。

それでも民衆党が、一連の逮捕は与党・民進党による政治的謀略だとの主張を取り下げることはなさそうだ。

From thediplomat.com

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中