最新記事
事件

「トランプ暗殺未遂事件」の動機は謎のまま...容疑者の素顔とは? 

2024年7月19日(金)11時08分
トーマス・クルックス容疑者

7月17日、米東部ペンシルベニア州バトラーで演説中のトランプ前大統領をライフル銃で狙撃したトーマス・クルックス容疑者は、20歳のコンピューター好きの内向的な青年で大学の工学部への入学を決めたばかりだった。 写真は高校の年次アルバムのクルックス容疑者。提供写真(2024年 ロイター/Aaron Josefczyk)

米東部ペンシルベニア州バトラーで演説中のトランプ前大統領をライフル銃で狙撃したトーマス・クルックス容疑者は、20歳のコンピューター好きの内向的な青年で大学の工学部への入学を決めたばかりだった。

暗殺未遂から4日が経ったが、容疑者の背後にある思想や引き金を引いた理由は謎のままだ。


 

米連邦捜査局(FBI)がクルックス容疑者の携帯電話を調べたところ、銃撃事件の数日前にバイデン大統領とトランプ氏、さらに他の著名人の画像を検索していたことが判明したと米紙ニューヨーク・タイムズ紙が17日報じた。

トランプ氏が公の場に出る日と民主党全国大会の予定を検索していたという。また「重度のうつ病」についても調べていた。

クルックス容疑者は2年制のアレゲニー郡のコミュニティーカレッジで工学を学び5月に卒業した。

同校のある講師は容疑者が提出した課題を見直してみたが、期待されている以上の努力をするまじめな学生で、暗殺未遂事件を犯したことに当惑したと明かした。宿題の回答は思慮深く、メールも丁寧だったと振り返った。障害者向けのおもちゃを再設計する課題で優秀な成績を収めたという。

同校で工学を専攻しクルックス容疑者と一緒に2つのオンライン授業を受けたというサミュエル・ストロットマン氏は、容疑者が講義中に一度も発言せずカメラもオフにしていたと指摘した。

同校のある職員は、クルックス容疑者は物静かだが感じが良く、機械工学のキャリアを目指すことに興味があるようだったと語った。狙撃事件を起こしたのは「本当に、本当に、本当に意外だった」と述べた。

容疑者はその後、近隣のロバート・モリス大学で工学の勉強を続ける予定だった。最近まで介護施設で食事補助の仕事をしており、「何の心配もなく仕事をこなしていた」(同施設)。

クルックス容疑者はピッツバーグ郊外の中流階級が住むベテルパークの質素な家に両親と姉と一緒に住んでいた。

高校の同級生によると、容疑者は目立たないようにしていたという。元同級生の一人は、歴史の授業で他の生徒がリベラル寄りの発言をする中、クルックス容疑者は保守的な意見を述べたとフィラデルフィア・インクワイアラー紙に語った。

高校の卒業アルバムには顔写真はなく、名前だけが記されていた。元同級生はロイターに、彼はゲームとコンピューターの組み立てが好きだったと語った。

クルックス容疑者が住んでいたベテルパークは人口約3万3000人で、2020年の大統領選ではトランプ氏が65票差で勝利した。

クルックス家ではトーマス容疑者は共和党に登録していたが、17歳の時に民主党の政治活動委員会(PAC)に15ドルを寄付している。両親はどちらもソーシャルワーカーで、父親はリバタリアン、母親は民主党の支持者だった。

22年に退職したスクールカウンセラーのジム・ナップ氏は、クルックス容疑者について、周りの助けを求めるような子どもではなかったため目に留まることはめったになかったと語った。時々昼食時に一人で座っていることがあり、誰かと一緒に座りたいか聞くと、一人で大丈夫と答えたという。

高校時代の元同級生マックス・リッチ氏は、クルックス容疑者は内気で、暴力事件を起こすようなタイプには見えなかったと語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中