最新記事
ケニア

ケニアで若者の怒りが爆発 反増税デモの背景「マイクロファイナンスの闇」とは?

Roots of Unrest

2024年7月2日(火)14時47分
ニナ・バーマン(アリゾナ州立大学教授〔国際文学・文化学〕)
ケニア反増税デモの様子

6月25日、ケニア全土に増税法案反対のデモが拡大。警官隊が催涙スプレーを使用する中、若者たちは腕をクロスさせるジェスチャーで抗議した Boniface Muthoni / SOPA Images via Reuters Connect

<貧困層に公正な「成功の機会」を与えるはずのマイクロファイナンスが、民間業者によって短期・高金利の「略奪的な貸し付け」に。若者たちの首を絞めている──>

経済不安に揺れるケニアで6月25日、増税を含む財政法案に抗議して数千人のデモ隊が議会を襲撃。ウィリアム・ルト大統領は法案を撤回した。

しかし、今回の騒動の根本的な原因は、しばらく前からくすぶっていた。ケニアの若者は、自分たちに不利な経済的・金融的インフラの中で生きていくのに必死なのだ。


その顕著な例が、貧困層向けの小口融資であるマイクロファイナンスだ。ケニア南部の海岸の町ウクンダでは、安定した仕事はなかなか望めない。29歳で独身のサミュエルはボダボダ(バイクタクシー)で勝負しようと決めた。

4カ月をかけて資金をため、2022年7月に中国製バイクを購入した。1058ドルのうち10%の頭金を払い、残りはフィンテック(IT技術を使った金融サービス)業者でローンを組んだ。手数料が170ドル。12カ月払いで月利4%、年利にすると48%。利息だけで450ドルを超えた。

ボダボダの運転手の収入は1日4~8ドル。1年間、休みなしで働いた。週29ドルの返済に加えて、家賃、食費、電話代、ガソリン代、さらには家族への仕送り。何とか食いつないでローンを完済し、バイクは自分のものになった。

サミュエルのように幸運な人は決して多くない。34歳で3児の父のジュマは、23年2月にサミュエルと同じフィンテック業者と契約して同じ種類のバイクを購入した。

生活費がかかるジュマは、月利6.6%、年利79.2%の18カ月ローンを組まざるを得なかった。返済総額はバイクの価格の2倍近くになる。家計が重くのしかかり、すぐに返済が滞りそうになった。

ケニアでは近年、民間業者のマイクロファイナンスが普及しており、貧困者の多くが似たような苦境に直面している。

若者の失業率は67%と高く、このような融資は、生活費を稼ぐために小規模ビジネスに参入する際の、簡単だがリスクの高い手法になっている。

そして、略奪的な貸し付けを含む金融システムに対する不満が、生活費の高騰で大きな打撃を受けている若者をデモへと駆り立てた。

経済の安定を目指すグローバルサウス全域に、こうした融資の罠が張り巡らされている。マイクロファイナンスの慣行は、かつて多くの慈善家や投資家が期待したように個人に力を与えるどころか、略奪的になっていった。

略奪される社会の弱者

1990年代にマイクロファイナンスが広まり始めた当初は、少額を低金利で貸し出す仕組みだった。しかし近年は、広く利用できるマイクロクレジットの大半が、民間のフィンテック業者による短期で高金利の融資だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

パウエルFRB議長巡る召喚状、地裁が差し止め 司法

ワールド

焦点:雪解けは本物か、手綱握りなおす中国とロシア向

ワールド

米、イラン新指導者モジタバ師ら巡る情報提供に最大1

ワールド

トランプ氏、イラン濃縮ウランのロシア移送案拒否 プ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 10
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中