最新記事
北朝鮮

北朝鮮の「汚物風船」はプロパガンダや動物の糞便入り

North Korea launches swarm of sewage balloons

2024年5月30日(木)18時00分
ジョン・フェン
北朝鮮が韓国に飛ばした「汚物入りプロパガンダ風船」 Estado Mayor Conjunto de Corea del Sur / Latin America News Agency via Reuters Connect

北朝鮮が韓国に飛ばした「汚物入りプロパガンダ風船」 Estado Mayor Conjunto de Corea del Sur / Latin America News Agency via Reuters Connect

<脱北者らが韓国側から北朝鮮に向けて金正恩体制を批判するビラを飛ばしたことなどに対する報復だという>

韓国軍は5月28日、ごみや汚物が入った「プロパガンダ」風船の飛来を確認したことを受けて、各自治体を通じて市民に緊急災害速報メールを送った。風船は北朝鮮が飛ばしたものとみられ、中にはごみや汚物が含まれていた。

【画像】【動画】北朝鮮の「汚物入り風船」はプロパガンダや動物の糞便入り

軍は北朝鮮と韓国の軍事境界線に近い京畿道と江原道の住民に対して、屋外での活動を控え、不審物を発見した場合には韓国軍と警察当局に通報するよう通知。韓国軍合同参謀本部は、29日朝までに「反韓のメッセージが書かれたビラ」がついた風船少なくとも150個が韓国側に飛来したと明らかにした。

韓国を拠点に活動するフリーランス記者ラファエル・ラシドはX(旧ツイッター)上で、韓国の複数の都市や町に飛来した風船の一部を捉えた写真を共有した。

韓国軍は風船を調べるために爆発物処理班と化学・生物兵器対応チームを派遣したと発表。ソーシャルメディア上に投稿された複数の写真を見ると、風船には使い古された電気製品の部品や使用済み電池など、さまざまなごみが入っていた。

また複数の目撃者が地元メディアに対して、一部の風船には北朝鮮寄りのプロパガンダのほか動物の糞便らしきものも入っており、ひどい悪臭がしたと語った。

韓国当局は大掛かりな清掃作業を展開し、また軍合同参謀本部は北朝鮮の行動を「低レベルで危険」だと非難した。

韓国のビラ散布に強烈な反発

北朝鮮は以前から、脱北者などが大型風船を使い、金正恩体制を批判するビラなどを韓国側から北朝鮮側へ飛ばしていると不満を述べてきた。26日には北朝鮮の金剛日国防次官が、北朝鮮と韓国の境界付近に「ビラやその他のごみを散布する韓国の卑劣な心理戦」を激しく非難し、今回の反撃を「予告」していた。

北朝鮮のメディア「朝鮮中央通信」によれば、金剛日は韓国側に「報復」を行うと警告した。「近いうちに古紙や汚物の山が北朝鮮と韓国の境界周辺および韓国内陸部に産卵し、韓国はそれらを取り除くのがどれだけ大変かを直接経験することになるだろう」と彼は述べた。

1953年に朝鮮戦争の休戦協定に基づいて設定された軍事境界線は、北朝鮮と韓国の事実上の国境の役割を果たしてきた。京畿道は韓国で最も人口が多く、首都ソウルを取り囲むように位置している。

北朝鮮は27日、軍事偵察衛星の打ち上げを行ったものの、その直後にロケットが空中爆発して失敗したと明らかにしていた。今回のプロパガンダ風船がこの打ち上げ失敗と関係しているのかどうかは分かっていない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

AI端半導体「ブラックウェル」対中販売、技術進化な

ワールド

チェイニー元米副大統領が死去、84歳 イラク侵攻主

ビジネス

リーブス英財務相、広範な増税示唆 緊縮財政は回避へ

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中