最新記事
水不足

地球の水不足が深刻化...今世紀末までに世界人口の66%が影響を受ける恐れ

Earth Facing 'Global Water Crisis'

2024年5月29日(水)14時30分
ロビン・ホワイト
(写真はイメージです) Jong Marshes-Unsplash

(写真はイメージです) Jong Marshes-Unsplash

<オランダ・ユトレヒト大学の研究チームが、今世紀末までに予想される水危機の程度を示す研究結果を発表>

地球が世界的な危機に瀕している。世界の水は量も質も悪化が予想されるという研究結果がこのほど発表された。

オランダ・ユトレヒト大学の研究チームは、世界の水モデルを使って今世紀末までにどの程度の危機が予想されるかを推測し、研究結果を科学誌「Nature Climate Change」に発表した。

気候変動は世界中で深刻な問題を引き起こしているが、水枯渇の問題は特に大きい。水の蒸発が加速し、気象パターンが予測しにくくなる中で、世界で使用される水の量は補充される量を上回っているようだ。水枯渇には汚染や水質などの要因も絡む。実際のところ、水の量と質の両方について検証した研究は今回が初めてだった。

「水不足は将来的に悪化が予想され、影響を受ける人の数は増える見通しだ」。筆頭筆者で水専門家のエドワード・ジョーンズは本誌にそう語った。こうした「世界的な水危機」に注目する必要があると、同氏は声明で述べている。

「社会的変動であれ、気候変動であれ、大規模な世界変動が人類に与える影響を推し量る上で、こうした研究は重要だ」とジョーンズは語り、「人類がいずれ直面する水問題について広く知ってもらい、行動を促したい」と言い添えた。

「本研究で我々は、気候変動、水需要の増大、水質汚染が組み合わさって水不足を引き起こしていることを示した。従ってこの問題に対応するためには、気候変動対策と水使用効率の増大、人為的汚染の抑制を組み合わせる必要がある」

研究チームは水質と量のモデルを使用してシミュレーションを行い、現在と今後の課題を探った。

その結果、世界の人口の55%は、1年間に1カ月の頻度できれいな水が枯渇する地域に住んでいることが分かった。状況の悪化に伴い、今世紀末までにこの割合は66%に増える可能性があると研究チームは危惧する。

水不足は世界的な問題だが、深刻さは地域によって差がある。研究チームによると、例えば米国は1年間に数カ月間、水不足に見舞われる。西欧も同じ状況だ。

一方、途上国の水不足はそれ以上に深刻な状況にあり、1年を通して続く期間も長い。

「今後は特にグローバルサウス、中でもアフリカのサハラ砂漠以南の人口に大きな影響が出る。この結論は、増加の程度は異なるものの、我々が検討した気候変動と社会的変動を組み合わせた3つのシナリオを通じて一環している」(ジョーンズ)

「考えられる最悪のケースでは、人口の3分の2が、年間1カ月以上にわたってきれいな水の不足に見舞われる。それより楽観的な推定に基づくと、影響を受ける人口は程度は低いながら間違いなく増加するものの、途上国で大幅に増加する状況が依然として顕著だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、和平協議「幾分楽観視」 容易な決断

ワールド

プーチン大統領、経済の一部セクター減産に不満 均衡

ワールド

プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中