最新記事
テロリズム

ISは復活し、イスラム過激派が活性化...モスクワ劇場テロで狼煙を上げた「テロ新時代」を地政学で読み解く

A GROWING THREAT

2024年4月12日(金)17時37分
カビル・タネジャ(オブザーバー・リサーチ財団フェロー)

ではグローバルなテロとの戦いを誰が率いるのか。軍事的には、今でもアメリカは世界最強の部隊を対テロ戦争に送り出せる。19年には当時のISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディを殺害。その後ISの指導者は顔も名前も表に出さない影の存在となったが、シリアで展開された米軍主導のIS撲滅作戦「生来の決意作戦」はその後も成果を上げてきたし、今も上げ続けている。

だが、その成果も限定的と言わざるを得ない。モスクワ近郊で起きたテロ後にISのアンサリ報道官が豪語したように、ISとその系列組織は世界各地に散らばり、影響力を広げ続けているからだ。

アフリカでは、ISと戦う地元の軍閥や自警団をロシアが支援。特にアメリカ、フランスなど西側の駐留軍が住民の反感を買っている国で影響力を広げようとしている。反政府勢力をつぶし、ISなどのテロ組織との戦いを支援することで、マリやブルキナファソなどの政権にテコ入れし、その見返りに自国の権益を拡大する──中ロは今、こうした試みに前のめりになっているようだ。

ロシアで起きたテロが示したのは、大国間の競争激化でテロ組織が活動しやすい状況が生まれ、イスラム過激派のテロが再び世界中で猛威を振るうリスクが高まっていることだ。

「ある人にとってのテロリストは、別の人にとっての自由の戦士だ」とはよく言われる言葉だが、その真偽は議論の余地がある。イスラム過激派のテロ組織はこの言葉を「勝利の方程式」として利用し、脅威と見なされる立場を脱して、国家と堂々と渡り合える存在になろうとしている。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む 市場予想下回る

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中