最新記事
中豪関係

中国、「スパイ容疑」のオーストラリア人作家に執行猶予付き死刑判決...民主主義擁護のブログ執筆、両国関係に冷や水

2024年2月5日(月)22時30分
ロイター
中国 裁判所

中国・北京の裁判所は5日、スパイ容疑で拘束された中国系オーストラリア人作家ヤン・ヘンジュン(楊恒均)氏に執行猶予付きの死刑判決を言い渡した。写真は北京市第2中級人民法院前で2021年5月撮影(2024年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

中国・北京の裁判所は5日、スパイ容疑で拘束された中国系オーストラリア人作家ヤン・ヘンジュン(楊恒均)氏に執行猶予付きの死刑判決を言い渡した。

同氏の家族の友人が明らかにした。2年後に終身刑に変更される見通し。

中国外務省報道官は、スパイ容疑で有罪となり、2年間の執行猶予付きの死刑判決となったと指摘。判決言い渡しに「オーストラリア側」の傍聴が認められたほか、全ての手続きが踏まれたと述べた。

ヤン氏は中国出身のオーストラリア市民で、民主主義を擁護するブログを執筆していた。ニューヨークで働いていたが、2019年に広州の空港で身柄を拘束された。ある国のためにスパイ活動を行ったとして拘束されたが、詳細な理由は明らかにされていない。

北京の裁判所は21年5月、ヤン氏の裁判を非公開で行った。ヤン氏はオーストラリアや米国のためにスパイ活動を行ったことを否定している。

同氏は著名なブロガーで中国や米国の政治について執筆。スパイ小説も書いていた。

ヤン氏の家族の代理人はシドニーで「最悪の展開にショックを受け、打ちのめされている」とのコメントを発表した。

オーストラリアのウォン外相は5日、裁判所の判決に「驚愕(きょうがく)」しているとし、中国の大使を呼び出したことを明らかにした。

中豪関係はここ数年間冷え込んでいたが、最近になって改善の兆しが見えつつあった。今回の判決で関係が再び悪化する可能性がある。

豪シンクタンク、ローウィー研究所のシニアフェロー、リチャード・マクレガー氏は「中国の体制の不透明性や、妥当な外交上の苦情への硬直的な姿勢を示すもので、両国関係に影を投げかける」と述べた。

シドニー工科大学の研究機関、豪中関係協会のディレクター、ジェームス・ローレンソン氏は、中国は対豪関係について、安定以上の段階に進めることを望んでいたが、判決により困難になったと指摘。

「外相の強い言葉は失望感の表れであり」、アルバニージー政権にとって中国との関係改善を図ることが極めて難しくなったと語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米小売売上高、5月ー0.9%で予想以上の減少 コア

ビジネス

日産、3代目「リーフ」を米で今秋発売 航続距離など

ワールド

ロシア安保高官が今月2回目の訪朝、金総書記と会談 

ビジネス

アングル:日銀、経済下押しの程度を注視 年内利上げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染みだが、彼らは代わりにどの絵文字を使っている?
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中