最新記事
中台関係

こんな場合に中国が台湾侵攻!浮上する6つのシナリオ

SIX POTENTIALS FOR WAR

2024年1月17日(水)14時40分
マイカ・マッカートニー(台北)
台湾で年に1度行われている大規模軍事演習で、昨年は台北駅でも初めて訓練が実施された ANN WANGーREUTERS

台湾で年に1度行われている大規模軍事演習で、昨年は台北駅でも初めて訓練が実施された ANN WANGーREUTERS

<独立宣言、核兵器の保有、外国軍の介入......米国防総省が絞り込んだ戦争勃発の筋書きとは>

米国防総省が昨年10月に公表した報告書は、中国が台湾で軍事行動を取り得るシナリオとして次の6つを挙げた。それぞれを検証すると──。

■正式な独立宣言

1949年の内戦で毛沢東が率いる共産主義者に敗れた中華民国は、台湾に逃れて国家を樹立した。台湾は1895~1945年には日本に占領され、それ以前は中国最後の王朝である清朝の名目上の支配下にあった。中華人民共和国は一度も台湾を統治したことがないが、それでも自国領土と主張している。中国は台湾が独立を宣言すれば戦争になると言ってきたが、2005年にはその脅しを「反国家分裂法」という法律に定めた。

■独立に向かうと疑われる動き

とはいえ、台湾は独立宣言を慎重に避け、曖昧な現状維持を望んでいる。

アメリカも同様に現状維持を望んでいる。国家として承認する政府を79年に台湾から中国に変えて以降、アメリカは双方に安心感を与える姿勢を取ってきた。中華人民共和国に対しては中国唯一の合法政府であると承認し、台湾には自国を防衛する十分な手段を持つことを認めている。

台湾総統を5月に退任する蔡英文(ツァイ・インウェン)は2020年に英BBCに対し、台湾は「既に独立国家である」から独立を宣言する必要はないと述べた。

■台湾での内乱

中国ははるかに小さな台湾で「内乱」が起きた場合に、武力を行使すると示唆している。

中国の指導層は、統一に反対する政治指導者やその支持者を「分離主義勢力」と呼ぶことが多いが、これはもちろん大半の台湾人に当てはまる。台湾社会は80年代後半に民主化への道を歩み始めて以降、おおむね平和的に発展してきた安全な国だ。

■台湾の核兵器保有

台湾は核兵器を持っておらず、保有を目指しているという証拠もない。

かつて台湾では、64年に中国が原爆を保有した後に秘密の核兵器開発計画が立ち上がった。だが80年代後半にアメリカがこの計画を知り、台湾に核開発を断念させた。

■統一に関する両岸対話の無期限の遅れ

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は22年10月の中国共産党大会で、台湾統一は「中華民族の偉大な復興」のために必要不可欠な一歩だと述べた。同じ週にはアントニー・ブリンケン米国務長官が、中国は「より早いスケジュールで統一を追求する決意を固めた」と語っている。

台湾民意基金会が昨年8月に実施した世論調査によると、中国との統一を支持する台湾人はわずか11.8%で、48.9%が実質的な独立を支持。さらに26.9%が現状維持を支持しており、これは台湾の民進党・国民党両党の公的な主張と一致する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大

ワールド

ロシアの対欧州ガス輸出、パイプライン経由は今年44

ビジネス

スウェーデン中銀、26年中は政策金利を1.75%に

ビジネス

中国、来年はより積極的なマクロ政策推進へ 習主席が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中