最新記事
ロシア経済

知的人材と資本の流出が止まらない...すでに「経済戦争」では敗戦状態のロシア【最新経済データ】

Putin's Cratering Economy

2024年1月10日(水)13時55分
ジェフリー・ソネンフェルド(エール大学経営大学院教授)、スティーブン・ティエン(同大学チーフエグゼクティブ・リーダーシップ研究所研究責任者)

■資本市場へのアクセスの喪失

企業にとって欧米の資本市場は今も、最も深度があって流動性が高く、安価な資金源だ。ウクライナ侵攻以来、欧米金融市場で株式・社債を新規発行できたロシア企業はゼロ。

つまり、もはやロシア企業は、高利で融資する国有銀行(指標金利は16%)など、国内の資金提供源を当てにするしかない。多国籍企業撤退で、ロシアのベンチャー企業は資金調達の選択肢を奪われ、国際的投資家に出資を求めることも不可能になった。

■富の大破壊と資産評価の急落

グローバル多国籍企業の大量撤退が一因で、ロシアでは、あらゆる分野で資産評価が急激に落ち込んでいる。筆者らの調べによれば、国有企業の企業価値はウクライナ戦争以前と比べて75%低下。NYTが指摘したように、多くの民間部門の資産価値は50%目減りしている。

これらの7つの現象は、グローバル企業が大量撤退したせいで、プーチンが強いられているコストの一部にすぎない。さらに、ロシア産原油に価格上限を設定する米財務省の措置など、効果的な経済制裁がロシア経済に与えている打撃も考慮すべきだ。

ロシアによる輸出の3分の2以上を占めるエネルギー資源は、輸出規模が半減している。工業分野でも消費者分野でも、グローバル経済において製品提供国でなかったロシアは麻痺状態にある。

簡単に替えが利く原材料を生産するばかりで、経済超大国には程遠い。今や国家に管理される企業の「共倒れ」体制によって、辛うじて戦争マシンを動かしている。

豊富な経済データを検証すれば、状況は明らかだ。外国企業の前代未聞の「ロシア大脱出」で、プーチンの戦争マシンには支障が出ている。ウクライナが瀬戸際に立たされるなか、極度に楽観視するのは過ちだが。

From Foreign Policy Magazine

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

サルコジ元大統領の有罪確定、仏最高裁 選挙資金違法

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 5
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「世界の砂浜の半分」が今世紀末までに消える...ビー…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 6
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中