最新記事
半導体

半導体の対中輸出規制はアメリカの自縄自縛か? 米半導体大手3社の主張とは

2023年10月23日(月)12時50分
アーディル・ブラール
ファーウェイの最新スマホには7ナノの先端半導体が搭載(上海の旗艦店)

ファーウェイの最新スマホには7ナノの先端半導体が搭載(上海の旗艦店) CFOTOーFUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

<米下院特別委員会の議員(民主党)は「米経済と中国のデカップリング(切り離し)は不可能」としつつも、今回の改定を「大きな前進だ」と評価>

米商務省産業安全保障局(BIS)は10月17日、中国の軍事力強化につながる恐れのある半導体や製造装置の輸出を制限する規制強化を発表した。この管理規則の改定で、米企業の対中半導体輸出はさらに困難になる。

中国は翌18日、「強烈な不満」を表明した。英字紙チャイナ・デイリーによると、同国商務省報道官は「アメリカは国家安全保障の概念を拡大解釈し、輸出管理措置を乱用し、一方的ないじめを行っている」と主張した。

BISは昨年10月、AI(人工知能)と量子コンピューターの分野における中国の躍進に歯止めをかけるため、アメリカと同盟国の最先端半導体技術の入手を困難にする一連の規制措置を発表した。だがナザク・ニカクタール元商務次官補によれば、この規制には中国企業が「あまり重要でない技術」にアクセスできる抜け穴が残されていた。

中国半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が技術面で飛躍を遂げたのは、「米規制当局があまり重要でないと判断した技術を管理対象にしなかったせいだ」と、ニカクタールは指摘する。こうした技術に改良を加え、最先端半導体の製造装置を完成させた中国は、「これらの半導体を間もなく軍事システムで使うようになる」という。

今回の改定により「灰色リスト」が作成され、アメリカが武器禁輸措置を取っている中国やイランなどの国々にあまり重要でない特定の半導体を売りたい企業は、米当局への報告を義務付けられる。

中国のAI技術向上に貢献したデータセンター向け半導体の輸出も停止される。これらの技術は極超音速ミサイルの誘導システムなど、直接的な軍事転用が可能だ。

華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の最新スマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載の5G半導体を開発するため、SMICが輸出規制を回避したとの臆測が米国内では広まっている。多くの中国企業は中国領マカオを迂回して規制を回避しているとされ、この抜け穴封じも今回の改定の狙いの1つだ。

「本日の改定は規制の有効性を高め、中国政府の軍民融合戦略がもたらす国家安全保障上の脅威に立ち向かうための措置だ」と、レモンド商務長官は述べた。

ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究センターは今月初め、SMICは「中国国内にペーパーカンパニーとパートナー企業のネットワークを構築し、アメリカの輸出業者を欺いて米国製機器や部品の入手を続けている」とする報告書を発表した。現在の輸出管理体制では、こうした動きを把握できるのか疑問が残ると、報告書を書いたグレゴリー・アレンは警告する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

外国企業復帰、ロシアの利益になるかどうか注視=検事

ワールド

石破首相、NATO首脳会議出席取りやめへ 岩屋外相

ワールド

豪、米のイラン攻撃を支持 外交再開呼びかけ

ビジネス

独アウディ、トランプ関税対応で米での工場建設案が浮
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中