最新記事
ウクライナ情勢

ロシアの大軍から要衝アウディーイウカを防衛したウクライナ軍の高度なドローン戦術

Putin's Avdiivka calamity

2023年10月17日(火)19時15分
エリー・クック

ロシア軍がアウディーイウカを制圧すれば、6月に反転攻勢を始めたウクライナ軍と激しい戦闘を続けているロシア側にとっての大きな戦果となる。

マーテンスは、「もしもウクライナがアウディーイウカを失えば、それはロシア側の防衛にとって重要な勝利になる」と説明。ロシアがアウディーイウカを支配下に入れれば、ウクライナ東部の要衝ドネツク州を今後、ウクライナ軍の攻勢からより強力に守ることができるようになるからだと述べた。

だがキングズ・カレッジ・ロンドン戦争研究学部の教授であるマイケル・クラークは先週、ロシアがアウディーイウカに照準を合わせたのには、ほかの前線からウクライナ軍の注意を逸らす狙いもあった可能性が高いと本誌に語る。ロシアは「流れが変わるまでの時間稼ぎをしながら、アウディーイウカの前線の至るところで攻撃を仕掛けている」ようだと指摘した。

マーテンスも、「ウクライナ軍の兵士たちを釘付けにするために攻勢を仕掛ける場所という意味では、理論的にアウディーイウカが最適だろう」と分析した。

秋と冬も反転攻勢は続く

ウクライナ軍は何カ月も前から、ウクライナ東部と南部でロシア軍に対する激しい抵抗を繰り広げており、幾らかの成果を上げているものの、反転攻勢の進展ペースは遅く、大きな代償も伴っている。秋と冬は雨や雪が多く前線が泥でぬかるむが、ウクライナ政府は条件が悪化しても、反転攻勢を続けると宣言している。

ロシア軍は15日の戦況報告の中でアウディーイウカについては言及しなかったが、ウクライナ軍参謀本部は16日、前日にアウディーイウカでロシア軍から15回を超える攻撃があったと述べた。

ウクライナ国防省情報総局の報道官は先週、アウディーイウカに対するロシア軍の攻撃は想定していたと述べていた。戦争研究所は先日の戦況分析の中で、地雷を敷設するなど、ウクライナ軍が攻撃に備えていた兆候がみられると指摘していた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマス、人質のイスラエル軍兵士の遺体を返還へ ガザ

ワールド

中国外相、EUは「ライバルでなくパートナー」 自由

ワールド

プーチン氏、G20サミット代表団長にオレシキン副補

ワールド

中ロ、一方的制裁への共同対応表明 習主席がロ首相と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中