最新記事
安全保障

玉城知事「日米が沖縄を防衛拠点化、不測の事態に懸念」  国連人権委員会で訴え

2023年9月21日(木)10時00分
ロイター
沖縄県の玉城知事

沖縄県の玉城デニー知事は、「米軍基地の集中だけでなく、自衛隊の急激な配備の拡張が住民の理解を得られないまま急がれている。そのことが不測の事態につながることがあってはならない」と述べ、中国の軍事力増強に対抗して南西諸島を防衛拠点化することがかえって緊張を高めかねないと懸念を示した。写真は県庁で記者会見する玉城氏。9月8日、沖縄県那覇市で撮影(2023年 時事通信)

沖縄県の玉城デニー知事は20日、「米軍基地の集中だけでなく、自衛隊の急激な配備の拡張が住民の理解を得られないまま急がれている。そのことが不測の事態につながることがあってはならない」と述べ、中国の軍事力増強に対抗して南西諸島を防衛拠点化することがかえって緊張を高めかねないと懸念を示した。

国連人権理事会に参加するため、スイスのジュネーブを訪問中の玉城氏はオンラインでロイターのインタビューに応じ、多くの国民が台湾に近い「沖縄に軍備増強することの何が悪いんだ」と考えていると指摘。「日本の安全保障を日本国民全員が関与して考えるべきことだ」と語り、軍事力強化だけでなく、外交を通じた緊張緩和を探る必要性を強調した。

中国軍が東シナ海の海空域で動きを活発化させ、台湾有事の懸念も強まる中、日本は2016年の与那国島を皮切りに、宮古島、石垣島と相次ぎ自衛隊の基地を開設した。

玉城氏は「基地が集中するゆえに、沖縄がかつてのあの戦争で体験したような、再びあのような体験を県民には絶対にさせてはならない」と語った。有事の際の住民避難やシェルター整備を含めた国民保護の計画に関しては「国の方針を注視していきたい」と述べるにとどめた。

玉城氏は18日に国連人権理事会で演説し、在日米軍基地が沖縄県に集中している現状を説明。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に関し、日本政府が県民投票などで示された民意を無視した形で新基地建設を強行していると訴えた。

玉城氏はインタビューの中で、最高裁が国の主張を全面的に認めたことについて、「辺野古に新しい基地を造らせないという県民の意思」を国連人権理事会や全国知事会との連携で国内外に発信していくと述べ、移設計画を認めない姿勢を改めて表明した。

(豊田祐基子、Tim Kelly 編集:久保信博)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中