最新記事
対中関係

韓国のリーダーシップに中国が激オコ...問われる日米韓「3国同盟」の本気度

2023年8月22日(火)11時25分
シャノン・ティエジー(ディプロマット誌編集長)
尹錫悦大統領, バイデン大統領,岸田首相

歴史的な首脳会談は尹大統領の尽力で実現した(8月18日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

<緊張した日韓関係の修復を目指す、尹錫悦大統領の尽力で叶った3カ国首脳会談...。中国から韓国への「圧力」にアメリカは本気で対抗する準備があるか>

日米韓の首脳が8月18日、米メリーランド州にある大統領の保養地キャンプデービッドで会談した。3カ国の首脳会談は過去に何度もあったが、NATO首脳会議やG7サミットのような多国間協議に合わせて行われるのが常だった。「単独」での3カ国首脳会談は今回が初めてだ。

この歴史的な一歩は、緊張した日韓関係の修復を目指す尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領の努力のたまものでもある。

日本との協力関係強化が国家安全保障にとって極めて重要だと、尹は一貫して強調してきた。そのせいで韓国国内では、日韓関係改善のために国を売ったと非難されたほどだ。

実際、尹の対日接近政策は韓国では評判が悪く、日米韓の協力強化は短期間で崩壊しかねない。今回の首脳会談で発表された構想は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が中国に約束した内容と真っ向から矛盾してもいる。

米韓が朴槿恵(パク・クネ)元大統領の決定に基づき、THAAD(高高度防衛ミサイル)システムの配備を正式に開始したのは2017年。THAAD配備に反対して強い警告を発していた中国は、非公式な(だが影響の大きい)韓国への経済制裁を打ち出した。

中国は韓国への団体旅行を禁止。国内でのKポップのコンサートや韓流ドラマの放映も中止した。その結果、韓国は17~19年、観光業だけで推定240億ドルの損失を出した。

文は経済的ダメージに対処するため、対中関係修復に動いた。THAADの追加配備、米主導のミサイル防衛システムへの参加、日米韓軍事同盟への参加はしないという「3つのノー」を約束したのだ。

だが、現政権はTHAAD以外の2つの「ノー」を「イエス」に変える方向性を模索し始めた。中国から見れば、事実上の3国軍事同盟と統合弾道ミサイル防衛網の土台造りのように見えるはずだ。

そもそも尹政権は3つのノーを否定している。朴振(パク・チン)外相は国会でこう述べた。

「3つのノー政策は中国と約束したものではない。私の知る限り、(当時の政権は)中国に対する自分たちの立場を説明しただけだ」。実際、3つのノーに関する正式な合意は存在しない。

今のところ中国の反応は抑制されているが、不快に思っているのは明らかだ。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中