最新記事
アフリカ

ニジェールの政変につけこむワグネルとアメリカの悪夢

U.S. in 'Nightmare Scenario' as Niger Coup Gives Wagner Group Opportunity

2023年8月3日(木)18時00分
ジョン・ジャクソン

ニジェール同様フランスの植民地だった中央アフリカ共和国やマリなどでは、フランスの駐留軍の撤退に伴い、その空白を埋める形でワグネルが雇われ、反政府勢力の鎮圧や兵士の訓練に当たってきた経緯がある。ニジェールの混乱につけ込んで、ワグネル、さらにはその活動を利用してきたロシアが、この地域で影響力を強めるのはほぼ確実とみていい。

ロイターは7月30日、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンとみられる人物が通信アプリのテレグラムにニジェールのクーデターを支持する音声メッセージを投稿したと伝えた。ロイターは発信者がプリゴジンであることは確認できなかったが、「ロシア語の特徴的なイントネーションと言い回し」からその可能性が高いと指摘した。

音声メッセージは西側の「植民地支配からの解放」を勝ち取ったニジェールの軍部を祝福し、秩序回復に貢献するためワグネル戦闘員の派遣を申し出る内容だ。

プリゴジンは6月後半にロシア軍トップに対する反乱を企てて失敗したが、今でもクレムリン高官とつながりを保っているとみられる。その証拠に7月末にロシアのサンクトペテルブルクでロシア・アフリカ首脳会議が開催された際、会場周辺にいたことを示す写真がワグネル系列のソーシャルメディアで公開された。

得するのはジハーディストだけ

クラークはその後のX(ツイッター)への投稿で、「ロシアがアフリカ諸国でクーデターを扇動しているなどと騒ぎ立てるのは避けるべきだが、ロシアは(ニジェールの政変などを)影響力拡大の好機とみなし、巧みに利用する。その能力をみくびってはいけない」と釘を刺した。

クラークは本誌のメール取材に応じてニジェールの状況をより詳しく述べた。それによれば、西側は西アフリカの15カ国の経済統合に向けた枠組み「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」を引き続き支援する。クーデター以前はニジェールもECOWASに加盟していたが、反西側を掲げる軍部が政権を握ったため、今後はロシアに急傾斜するとみられる。「ニジェール(さらには、やはりECOWASの加盟国であるブルキナファソとマリにも)ワグネルを通じて軍事的な支援を行ってきロシアは、この地域でさらに影響力を強めるだろう」と、クラークはみる。

結果的に、「より広い範囲に混乱が広がる確率が高まる」というのだ。

「そうなれば、一番得をするのはジハーディストだ。混乱に乗じて、サヘル地域で勢力を拡大し、新兵を募り、支配地域を広げるだろう。その可能性が高いとは言わないが、ゼロではない」

「サヘル地域全体にテロや戦闘が広がり、この地域の国々が挙って国家崩壊の危機に瀕すれば」、喜ぶのはジハーディストだけで、「アメリカも、ロシアと中国も、フランスも何かを失うことになる」と、クラークは警告する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」

ビジネス

米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連

ワールド

米、パレスチナ当局者へのビザ発給拒否 国連総会出席
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中