最新記事
クリミア半島

クリミア大橋を破壊したとされる「水上ドローン」とは? ウクライナは「攻撃用無人舟艇」の開発に成功したのか?

What are the aquatic drones reportedly behind strike on Crimea Bridge?

2023年7月18日(火)19時24分
エリー・クック

水上ドローン攻撃で損壊したとみられるクリミア大橋 Сrimea24tv/Handout/REUTERS

<ミサイルなどより破壊力は小さいが、標的ぎりぎりまで検知されずに接近できる。だが具体的にどんな兵器なのかは専門家でもその外見さえわからないという>

<動画>ロシアの軍港を襲ったとされるウクライナのカミカゼ水中ドローン

 
 
 
 

ウクライナ南部のクリミア半島とロシア本土を結ぶ「クリミア大橋」の攻撃には、ウクライナ軍の水上ドローンが使用された可能性がある。専門家はこの水上ドローンについて、ロシア側からは検知が難しいと指摘。ウクライナ側が今後、ロシアの軍やインフラを攻撃するために、さらに多くのドローンを投入する可能性が高いと予想している。

ロシア対テロ委員会は7月17日、現地時間の午前3時過ぎにウクライナの無人艇(USV)2隻がクリミア大橋を攻撃したと発表した。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」と関連する「テレグラム」チャンネルの「グレー・ゾーン」は、午前3時4分と3時20分の2回、橋に攻撃があったと伝えたが、本誌はこの情報について独自に裏付けを取れていない。ウクライナ政府は、攻撃を認めていない。

cremeabridge1.jpeg

同委員会は、損傷したのは鉄道橋ではなく平行して通る道路橋の方だったとし、爆発の巻き添えになり成人2人が死亡、子ども1人が負傷したとつけ加えた。

全長およそ19キロメートルのクリミア大橋は、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島とロシア本土をつなぐ重要なルートだ。ウクライナは必ず奪還すると繰り返し表明しており、専門家はウクライナが現在進行中の反転攻勢のいずれかのポイントでクリミア大橋を標的にする可能性があると予想してきた。

「違法な構造物は短命に終わる」

今回の攻撃に関連して専門家は本誌に対し、水上ドローン(無人艇)は標的に到達する直前まで検知しにくいため、ロシアがウクライナ軍の水上ドローンからクリミア大橋全体を守ることは非常に難しいだろうと指摘する。

クリミア大橋は2022年10月にも爆発で損壊している。ロシア政府はこの爆発がウクライナの攻撃によるものだと主張。しかしウクライナ政府はこれまで、橋の爆破を公には認めていない。

だが今回のクリミア大橋の爆発については、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領府のミハイロ・ポドリャク顧問が関連しているとみられる文章をツイッターに投稿。「ロシアが大量殺人のための装備を運搬するために使っている違法な構造物は、どのようなものであれ必然的に短命に終わる」と述べた。

またウクライナ議会のオレクシー・ゴンチャレンコ議員は17日、テレグラムに書き込みを行い、クリミア大橋の損壊は「ウクライナにとって大きな成功」だと述べ、「これに関与した全ての者に、国として最高の賞を授与すべきだ」と付け加えた。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はテレグラムに、橋の爆破はウクライナ政府によるものだと書き込み、さらに「アメリカとイギリスの諜報機関と政治家が直接関与し、ウクライナの当局者と軍が決定を下した」と主張した。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB現行策で物価目標達成可能、労働市場が主要懸念

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「引き締め的な政策」望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中