最新記事
中国

地方都市の「AIぼったくり駐車場」が全国的な「お上への反発」に発展した理由(中国)

2023年6月15日(木)16時05分
高口康太(ジャーナリスト)
駐車場

写真はイメージです Nikada-iStock.

<無断駐車するのと同じ感覚で合法的に駐車場を使えるという、まさにスマートなシステムだったが、裁判所と運営企業が提携。中国ならではの「制度」が組み合わさって......>

ぼったくり駐車料金!

最近、中国でバズった言葉だ。繁華街や観光地の駐車場料金がビビるほど高くて泣きそうに、という話だったら日本でも普通にある話だが、「世界最先端の監視国家」中国は一味違う。

昔ながらの「権力の濫用」と最先端のテクノロジーが悪魔合体することで、ちょっと奇妙なB級ニュースに仕上がっている。

事件の舞台となったのは広西チワン族自治区南寧市。5月23日、市長は記者会見を開き、ぼったくり駐車場料金について謝罪し、政府関係者ら5人の職務停止処分を発表した。

問題となったのはスマート駐車場システムだ。路肩に白線を引いただけの駐車スポットがある。メーターなどは設置されておらず、AI監視カメラが駐車した車の番号と駐車時間を記録し、スマホアプリで請求書を送りつけるという仕組みだ。

いちいち支払いをしなくても良いのはとても便利そう。ちょっくら無断駐車するのと同じ感覚で合法的に駐車場を使えるというのは、まさにスマートだ。

ただ、看板などで料金が明示されていないため、思ったよりも料金が高くてびっくりというケースも多いのだとか。

あるネットユーザーは「一晩停車したら100元(約2000円)も請求された!」とブチ切れていた。いくら地方都市とはいえ、南寧市の人口は約890万人、立派な大都市だ。一晩2000円ならぼったくりとまでは言えないようにも思うが、数年前と比べると数倍の価格だと怒り心頭である。

こんな金は払えん!と踏み倒していた人も多かったようで、南寧市のスマート駐車場運営企業が発表した「悪質踏み倒しリスト」には、未納額50万円を超える猛者たちがずらりと並んでいる。ロック板がついてる駐車場とは異なり、料金を払わなくても車を動かせるのだから、一定数の踏み倒しが出るのは必然だ。

ゆるーく行動制限をかける「失信非執行人リスト」とは

この問題も監視テクノロジーで解決しようというのが中国流。南寧市青秀区裁判所は5月、駐車場運営企業との提携を発表した。踏み倒し者をAIカメラとビッグデータでさくさく特定し、速攻で裁判にかけるという取り組みである。

中国には「失信非執行人リスト制度」がある。通称「老頼(踏み倒し者)リスト」。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「

ワールド

ルーブル美術館強盗、仏国内で批判 政府が警備巡り緊

ビジネス

米韓の通貨スワップ協議せず、貿易合意に不適切=韓国

ワールド

自民と維新、連立政権樹立で正式合意 あす「高市首相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中