最新記事
ロシア

モスクワへの大規模ドローン攻撃でロシアエリートが激怒

Russian Fury Over Moscow Drone Strikes: 'Terrorist Attack'

2023年5月31日(水)15時45分
イザベル・ファン・ブリューゲン

ドローン攻撃があったモスクワ郊外の住宅地(5月30日) Guardian News/YouTube

<攻撃を行ったとされるウクライナに対し、国民の間に報復の気運が盛り上がる、と期待する声も>

【動画】モスクワ市民の頭上を飛んでいくドローン

ドローンによる首都モスクワへの「テロ攻撃」はロシアのエリート層を激怒させており、ロシア政府はウクライナを非難している。ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ政府はロシアによる同様の反撃を受けることになると述べた。

プーチンは、全ロシア国営テレビ・ラジオ会社(VGTRK)に対し、5月30日朝のドローン攻撃はウクライナによるもので、ロシアの反撃を誘う意図があると語った。「彼らは私たちを挑発し、同等の反応を引き出そうとしている。どうするかについては、これから検討する」とプーチンは述べた。

モスクワが大規模なドローン攻撃の標的になったのは、15カ月余り前に始まったウクライナ戦争で初めてのことだ。ロシア国防省は、ウクライナが「テロ攻撃」を仕掛け、少なくとも8機のドローンが軽微な被害をもたらしたと非難している。モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長によれば、重傷者は出ていないという。

ウクライナは、攻撃への関与を否定している。

プーチンの公邸も

ロシアの独立系テレグラムチャンネル「ウィー・キャン・エクスプレイン」は、ドローンが目撃された場所を分析した結果として、ドローン攻撃の標的には、ルブリョフカ(モスクワ近郊の高級住宅地)にあるプーチンの公邸と側近の邸宅が含まれていたと報告した。

ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジはソーシャルメディア上で、ドローン攻撃に対する怒りを表明した一人だ。ただしプリゴジンはこの機会に乗じて、ロシア国防省を激しく非難している。プリゴジンはしばしば、ロシア軍の統率力について批判し、ワグネルの兵士から意図的に弾薬を取り上げていると訴えてきた。

「くさい卑怯者ども! おまえたちはいったい何をしているのだ?! こそこそ隠れていた戸棚から出てきて、この国を守れ! おまえたちは国防省だ! おまえたちは、何も物事を前進させていない! どうしたらモスクワに無人機(UAV)の侵入を許せるのだ?!」。プリゴジンは自身のテレグラムページで、怒りに満ちた音声メッセージを公開した。

「ドローンがルブリョフカの自宅まで飛んできて、家を燃やそうとするのを許すなんて。爆弾を搭載したUAVが自宅に突入したら、一般市民はどうすればよいのだ? 私は一市民としてものすごく怒っている。卑怯者どもは平然と、高価なクリームを塗りつけた太った尻で椅子に座っているのだ。ロシア国民には、極悪人どもにこのような質問をする完全な権利がある」

一方、元ロシア軍司令官の軍事ブロガーで、国家主義者を自称するイーゴリ・ギルキンは自身のテレグラムチャンネルで、政府系のテレビ局は、モスクワで起きたドローン攻撃の影響を小さく見せようとしているという、ある人物の見解を紹介した。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中