最新記事

日本社会

「日本の人口問題は防衛問題」──世界が慎重に見守る、日本の「急速な」少子高齢化

JAPAN’S DISAPPEARING ACT

2023年5月24日(水)15時50分
ジョン・フェン(本誌記者)

230530p42_NSK_02.jpg

人口減少に強い危機感を示し「子供ファースト」を掲げる岸田首相 ISSEI KATOーREUTERS

「少子高齢化に関して、日本は他国より10年、20年も先を行っている」と言うのは、アメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のエリン・マーフィー上級研究員。「その日本がどう対処するかを、各国は慎重に見守っている」

「韓国女性の置かれた状況も同じだが、彼女たちは子育てや育児休業などの問題について、日本人よりずっと大きな声を上げてきた」と、マーフィーは指摘した。

「さらに、不妊治療の問題もある。キャリアを優先して出産を先送りしてきた女性たちには必要な措置だが、これがやたらと高額で、必ずしも社会に受け入れられていない。どれも大きな問題なのに、日本政府の対応はお粗末だ」

「母となった女性の職場復帰は、必ずしも歓迎されない。家で子育てに励めという古い考え方が根強いからだ。職場に戻れたとしても、フルタイムで働きながら子育ても家事もこなすのでは負担があまりに重い。そもそも、政策決定に関わる立場にいる女性が少なすぎる」

真の問題は選択肢の少なさ

政治家も世論も保守色に染まっている日本では、人口減の危機についても、外向きではなく内向きのソリューションに頼りがちだ。現実を見れば、移民の受け入れを増やすしかないと思えるのだが。

東京大学教授でジェンダーや世代間格差の問題に詳しい社会学者の白波瀬佐和子に聞くと、必ずしも出生率の低さが問題なのではないという答えが返ってきた。

「それが人々の前向きな選択ならOK」だが、現実には「若い人の過半数が結婚して家庭を持ち、子供も欲しいと思っているのに、それを諦めている」。

しかも、日本は移民の受け入れに消極的だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中