最新記事

ロシア

クレムリンのドローン攻撃、手動操縦でロシア国内発射の公算大きい=米専門家

2023年5月6日(土)11時59分
ドローンによる攻撃の跡が残るクレムリンの屋根

ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。写真は5月4日、ドローンによる攻撃の跡が残るクレムリンの屋根(2023年 ロイター)

ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。

ロシア大統領府は3日、大統領宮殿内のプーチン大統領の居所を目指して無人機2機が飛来したが軍と特殊部隊がレーダー戦システムを用いて無効化したと表明。ロシアはウクライナがプーチン氏の殺害を図ったと非難したほか、4日になって攻撃の背後に米国の存在があると指摘した。

各国政府やオープンソースの情報アナリストは、目的地に飛来し爆発するように設計されたドローンの起源を突き止めようと、ドローンが撃墜される画像などを分析している。

非営利団体レジリエント・ナビゲーション・アンド・タイミング・ファウンデーションのダナ・ゴワード代表は、ロシアは2015年ごろから全地球測位システム(GPS)の偽信号を配信して測位信号をハッキングする「スプーフィング(なりすまし)」と呼ばれる手法でドローンを自動的に遠ざける対抗策を使い、クレムリンをドローン攻撃から守っていると指摘。こうした先進の防衛策が導入されていることを踏まえると、今回の攻撃に利用されたドローンはGPSを利用せずに手動で制御され、近くから発射された可能性があるとの見方を示した。

ドローン製造業者のBRINCの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ブレーク・レスニック氏は「ドローンが検知され破壊されることなく、モスクワ上空を飛行し、クレムリンに到達できたのは驚きだ」と指摘。クレムリンにはレーダーと視覚追跡をベースにした近接防御システムがいくつもあり、弾丸や爆発物を使ってドローンやミサイルから守ることもできるにもかかわらず、ドローンがクレムリンに到達したのは「比較的小さなサイズと低い高度が役に立った可能性がある」としながらも、「ドローンがGPSを利用せず、地上管制局と通信していなければ、スプーフィングを回避できた可能性がある」と述べた。

長距離の飛行が可能な軍事用ドローンを保有している国は限定されるとの指摘もある。ドローン専門家で技術者擁護団体バーティカル・フライト・ソサエティーのダン・ゲッティンガー氏は、中国、インド、台湾、ウクライナなどは400キロメートルを超える距離を飛行できる大型軍用ドローンを保有しているとしながらも、今回の攻撃に使われたドローンがロシア国内から発射されていた場合、実行できるドローンの数はかなり多くなるとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領死亡、中東の状況注視する=林官房長官

ワールド

イラン大統領と外相が死亡、ヘリ墜落で 周辺諸国が弔

ビジネス

日本KFC、カーライルが1株6500円でTOB 非

ワールド

インドネシア、25年経済成長予測引き下げ 財政赤字
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中