最新記事
インド軍

インド軍幹部「人民解放軍と戦う準備はできている」、異例の率直さで中国を語る

India Ready for 'Any Contingency' Against China, Says Head of Army

2023年3月29日(水)18時35分
ジョン・フェン

行進するインド兵(2020年1月23日、ニューデリー) Altaf Hussain-REUTERS

<中印国境を越える侵攻に戦力を厚く備えるだけでなく、G20 の議長国として、また「グローバルサウス」のリーダーとして、インドが中国の覇権拡大を阻止すると表明>

インド軍幹部が3月27日、同軍は、これまで長く争いの種となってきた中印国境における「いかなる不測の事態」にも準備を整えていると語った。中印国境での中国軍の戦力増強について概説した中での発言だった。

インド陸軍のマノジ・パンデ参謀長は、中国政府は年を追うごとに「かなりの部隊増強」をしており、実効支配線(LAC)沿いで飛行場や兵舎など軍事インフラの運用を続けていると述べた。中国という「全体主義国家」は、多方面からの戦略を用いてアメリカを追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしていると。

パンデの発言は、インドの高官からの言葉としてはこれまでで最も率直なものの1つであり、中国政府を苛立たせる可能性が高い。パンデは、数十年にわたって続いてきた中印国境の紛争の重要性について強調した。

インドは、北部国境沿いにおいて軍の配備を見直した、とパンデは述べた。「我々は、高次の準備態勢を維持し、断固として力強くありながらも、慎重に注意深く中国人民解放軍と向き合っている。それによって我々の主張の正しさ示す」

インド太平洋における現状変更の試み

パンデの発言は、ニューデリーのシンクタンクCCASと、インド西部にあるサビットリバイ・フール・プネー大学防衛戦略研究学部の主催で行われた中国の台頭についての会議で行われた。その基調講演でパンデは、国境管理に関する協定を、中国は「LACをまたぐ不法侵入」によって破り続けていると付け加えた。

インドと中国は、両国の間の全長約3400キロに及ぶ実効支配線の一部をめぐって、1962年に軍事衝突した。2020年6月には、国境東部にあるヒマラヤ山脈の峡谷で小競り合いが発生し、半世紀近くなかった死者を出す衝突に発展した。インド軍では約20名、中国軍では少なくとも4名の兵士が死亡したが、両国政府の協定に従い、戦闘は殴り合いやこん棒や投石によるもので、銃は用いられなかった。

公になっている中で最新の衝突は、2022年12月に発生した。インドの国境警備兵が、(報じられるところによるとアメリカ情報機関の支援を得て)実効支配線の西端から侵入した中国軍を撃退したという。

中国政府は経済を優先して国境に関する見解の相違については棚上げしたがっているが、これについてパンデは、「二国間の関係は国境問題と切り離して考えられるものではない」と釘を刺した。

パンデは、インド太平洋地域では、他にも至るところで、長く続いてきた現状を変更しようとする類似の試みがおこなわれていると主張した。「南シナ海への進出、台湾への圧力、実効支配線付近における好戦的な行動などから、中国は、国際ルールではなく『力こそ正義』と解釈していることがますます明白になっている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで約4年ぶり安値、米財政

ワールド

米特使「ロシアは時間稼ぎせず停戦を」、3国間協議へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中