最新記事
宇宙

中国、衛星1万3000基打ち上げ計画──スターリンク対抗で宇宙空間の「場所取り合戦」に

2023年3月8日(水)19時23分
青葉やまと

中国政府は、軍事利用の可能性を秘めた通信衛星コンステレーションについて、スペースXに一方的に掌握されることを嫌った可能性がある。

マスク氏は今年2月13日、「第3次世界大戦につながりかねない紛争の激化は認めるわけにはいかない」とツイートし、ドローンの操縦を目的とした通信を遮断したと発表した。

これとは別に、中国は俗に「グレート・ファイアーウォール」と呼ばれるシステムを構築し、国内のネット通信を一元的に監視している。検閲回避の抜け穴となることを嫌い、独自システムの開発に踏み切った可能性もありそうだ。

スターリンクの追跡は中国軍の能力外 場所取り合戦で対抗試みる

GWプロジェクトのもとで大量の衛星を低軌道に投入する動きは、スペースXと中国当局とのあいだで、宇宙空間の「場所取り合戦」に発展するとみられる。

香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙によると、中国人民解放軍の宇宙科学者であるXu氏は論文を通じ、GWの衛星群は「スターリンクが完成する前(すべての衛星が配備される前)」をねらって迅速に軌道に投入されると明かした。

この動きにより、「我が国(中国)が低軌道上に場所を確保し、スターリンクの衛星群が低軌道のリソースを過度に先取りする事態を防ぐことができる」と論文は述べている。

さらに論文は、4万基というスターリンクの衛星網について、中国の防衛・監視能力では追跡しきれない数に上ると認めている。このため、自前の衛星網を有利な位置に前もって展開することで、対抗策としたい考えのようだ。

サウスチャイナ・モーニングポスト紙はさらに、GW衛星が「アンチ・スターリンク」のペイロードを搭載し、スターリンク衛星の活動を至近距離から監視するなど、さまざまな工作を実施する可能性もあると論じている。

衛星コンステレーションをめぐっては、災害時のバックアップとして有益である一方、低軌道を埋め尽くす衛星が天文分野の観測の妨げとなるなど弊害も指摘されている。

中国との展開競争が過熱することで、天文学者にとってもさらなる頭痛の種となりそうだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中