最新記事

南シナ海

比マルコス大統領が中国大使召還 艦船へのレーザー照射問題で親中路線転換へ

2023年2月15日(水)20時00分
大塚智彦
中国海警局の船舶

フィリピン沿岸警備隊にレーザー照射をしてきた中国海警局の船舶 REUTERS

<習近平との1月の合意から一転、米との連携強化へ>

フィリピンのマルコス大統領は2月14日に在フィリピン中国大使を大統領官邸へ召喚し、13日に公表された中国海警局船舶によるフィリピン沿岸警備隊艦船へのレーザー照射事案に関して遺憾の意を示した。

通常外国の大使を召還して遺憾の意や抗議を示すのは外相と相場が決まっているが、元首である大統領が召喚して直接遺憾の意を示すのは異例で、それだけフィリピン政府がこのレーザー照射問題を重く見ていることの表れといえる。

「中国による頻繁で集中的な行為」に懸念伝える

マルコス大統領は中国の黄渓連大使をマニラのマラカニアン大統領公邸に呼び出してレーザー照射が「極めて重大であり遺憾である」との懸念を伝えた。

大統領府はさらに黄大使に対してマルコス大統領から「最近の比沿岸警備隊や比漁船に対する自国の海洋権益内で発生している中国による頻繁で集中的な行為に対して重大な関心と懸念がある」と伝えたことを明らかにしている。

これに対し在比中国大使館は声明を発表しその中で「黄大使とマルコス大統領は互いに対話とコミュニケーションを通じて両国の海洋問題を的確に扱うとの観点から意見を交換した」と述べるに留まった。

比政府はすでに中国政府に抗議の意味を込めた遺憾の意を伝達しているが、中国外務省は「中国の領海に比艦艇が進入したことがそもそもの原因である」と一方的に正当化し、レーザー照射に関しても「現場での対応は抑制的であった」と表明。フィリピン側の怒りにさらに油を注ぐ態度を示している。

1月のマルコス=習近平会談では

フィリピン外務省は1月にマルコス大統領が訪中して習近平国家主席と会談した席では、南シナ海問題については「友好的な協議を通じて対処する」と外交的解決の道筋を探ることで合意していたことを改めて確認している。

それに反するような今回の中国によるレーザー照射について、フィリピン側は「中国によるこうした攻撃的な挑発行動は憂慮される問題であり失望している」と不信感を露わにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、11月CPIが予想下回る 

ビジネス

トランプ氏、FRB議長候補のウォラー理事と面会 最

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩和の大統領令に署名 分類見直

ワールド

米政権、ICC判事2人に制裁 イスラエルへの捜査巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中