最新記事

トルコ

「これ以上住み続けることはできない...」トルコの若者たちの国外脱出が止まらない

2023年2月2日(木)11時04分
ステファニー・グリンスキ(ジャーナリスト)

これ以降、学生、若いプロフェッショナル、セレブ、中上流層、そして宗教団体まで、あらゆる人たちが国を出て行くようになった」と、オズテュルクは言う。

トルコ外務省によれば、国外で暮らしているトルコ人は650万人を超すという。状況が改善する見通しもなさそうだ。エルドアンの与党・公正発展党(AKP)は、世論調査での支持率が下落し、苦しい選挙戦を強いられている。

しかし、野党連合は現時点で大統領選の統一候補を擁立できず、時間切れが近づいている。「選挙の後、国外移住を望む人が再び増え始めるかもしれない」と、オズテュルクは言う。

国民の大量国外脱出は、既にトルコにダメージを及ぼし始めている。

「トルコにとって最も重要な資本が......流出している」と、カーネギー国際平和財団のアルペル・ジョシュクン上級研究員は指摘する。「AKPとトルコの若い世代の間には、明らかに断絶がある」

トルコの現体制を支持していないと語るギョクチェ・トゥンカは、39歳のエンジニア。トルコで勤務していたフランス企業で社内異動を希望し、現在はフランス南部のグルノーブルで暮らしている。

「状況がよくなれば、絶対にトルコに戻る。でも、今は無力感しかない。何も変えられないと感じている」と、トゥンカは言う。

ただこのように語りつつも、祖国への思いを断ち切れているわけではないようだ。

「フランスは住みやすい国。けれど、私の祖国ではない」

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ワシントンの州兵銃撃、1人が呼びかけに反応 なお

ビジネス

アングル:ウクライナ、グーグルと独自AIシステム開

ワールド

韓国大統領、クーパン情報流出で企業の罰則強化を要求

ワールド

豪政府支出、第3四半期経済成長に寄与 3日発表のG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中