最新記事

ロシア

「プーチンは戦争から手を引いた」──元ロシア軍情報将校

Putin No Longer Leading Ukraine Effort, Girkin Says: 'A Complete Failure'

2023年2月1日(水)17時55分
ブレンダン・コール

マレーシア航空17便撃墜事件の裁判で映し出されたギルギンの写真(2019年、オランダのニュルンベルク) Eva Plevier-REUTERS

<クリミア併合やドネツク樹立で重要な役割を果たし、マレーシア航空17便撃墜で終身刑を受けた大物テロリストが動画でプーチンを猛烈批判。勢いを増す反プーチン愛国主義勢力の意見を代弁した>

ロシアの軍事ブロガーでウクライナにとってはテロリストのイーゴリ・ギルキンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻の進め方を痛烈に非難する見解を発表した。

イーゴリ・ストレルコフという名でも知られるギルキンは、元ロシア軍情報将校で、2014年のロシアのクリミア併合で重要な役割を果たし、ウクライナ東部ドンバス地域の紛争でドネツク人民共和国の武装勢力を組織した。

ウクライナにおけるロシアの軍事的失敗や、プーチンと軍司令官たちの欠点についてギルキンは鋭く、手厳しい評価を下した。

1月30日にSNSの「テレグラム」に投稿した動画で、ギルキンはロシアのいわゆる「特別軍事作戦」は、動員が進まないために「失敗」に終わることを2022年5月の時点で予測していたと語った。

この戦争の間に、海外からの物資の供給が途絶え、ロシアの製造業は「崩壊した」と彼は述べた。そして、戦争を遂行しているロシアの「将官と官僚」を非難した。彼の見解によれば、このような連中のもとでは、「本当の意味で動員も準備も行えないし、戦争もできない」

昨年夏と同じ泥沼へ

プーチンは昨年9月に動員令を発表したが、召集には「ブレーキ」がかかっている。総動員令を発令せずに部分動員に留めたからだ。ロシア軍は現在の兵員ではやっていけない、とギルキンは考えている。

「だからプーチンは特別軍事作戦の指揮から完全に手を引き、セルゲイ・ショイグ国防相に委任したが、ショイグの戦争準備はひどいものだった」とギルキン氏は言う。「あれを準備と呼べるかどうかさえ、わからないが」

「すべてが昨年の夏と同じ道をたどっている」とギルキンは言う。当時ロシア軍はウウライナの反撃で手痛い挫折を味わった。「戦いの場が(東部ドネツク州の)ピスキーではなく、バフムトになっただけだ」

昨年8月、ロシア軍はピスキーを掌握したと発表したが、ウクライナ側はこれを否定した。バフムトをめぐる戦いはもう数カ月にわたって続いている。

ウクライナのアントン・ゲラシチェンコ内務省顧問はギルギンの動画をリツイートし、「テロリストのギルキン=ストレルコフが、戦争の準備を怠ったロシア指導部とロシア軍を批判し、ロシアが戦争に負ける運命にあると予言している」とコメントした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港GDP、第3四半期改定+3.8%を確認 25年

ワールド

ロシアが無人機とミサイルでキーウ攻撃、4人死亡・数

ビジネス

インタビュー:26年春闘、昨年より下向きで臨む選択

ビジネス

ニデック、4―9月期純利益58%減 半期報告書のレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中