最新記事

宇宙

「地球とほぼ同じ大きさ」の太陽系外惑星──ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で初めて観測される

2023年1月23日(月)15時51分
松岡由希子

太陽系外惑星「LHS 475 b」(手前)が、赤色矮星「LHS475」(上)を公転する想像図 NASA

<ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測で初めて、太陽以外の恒星を公転する「系外惑星」が確認された......>

2021年12月に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測で初めて、太陽以外の恒星を公転する「系外惑星」が確認された。2023年1月11日、アメリカ天文学会(AAS)第241回会合でその研究成果が発表されている。

この系外惑星「LHS475b」は、41光年先のはちぶんぎ座にある赤色矮星「LHS475」を約2日周期で公転している。その半径は地球の0.99倍で、地球とほぼ同じ大きさだ。

>>■■【動画】ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、地球サイズの太陽系外惑星、観測!

「この惑星がそこに存在することは間違いない」

2018年4月に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)のトランジット系外惑星探索衛星(TESS)でその存在はすでに示唆されていた。その後、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)の研究チームがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測対象として「LHS475」系を選定した。

研究チームは2022年8月31日と9月4日にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器(NIRSpec)で「LHS475b」が主星「LHS475」の手前を横切る「トランジット」を計2回観測した。

研究論文の筆頭著者でジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所のジェイコブ・ルスティヒ-イェーガー研究員は「この惑星がそこに存在することは間違いない。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データがそれを証明している」とコメントしている。

メタンの大気は存在しないが二酸化炭素は...?

研究チームは透過スペクトルを分析し、「LHS475b」の大気について解明しようと試みたが、大気の存在を確定的に結論づけるまでには至らなかった。土星の衛星「タイタン」のようなメタンが多く含まれる厚い大気は存在しないと考えられる一方、検出されづらい二酸化炭素でその大気が組成されている可能性は否定できない。

今回の観測では「LHS475b」の平衡温度が華氏586度(摂氏約308度)で、地球よりも高いことも明らかとなった。もし雲が検出されれば、「LHS475b」は、二酸化炭素の大気があり、常に厚い雲に覆われる金星と似ている可能性もある。

NASAの天体物理学部門のディレクターを務めるマーク・クランピン博士は、今回の観測結果について「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による岩石惑星の大気の研究の可能性を大いにひらくものだ」と高く評価した。研究チームでは2023年夏の観測で追加のデータを取得する計画だ。

>>■■【動画】ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、地球サイズの太陽系外惑星、観測!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中