最新記事

米政治

15回投票の米下院議長選、極右議員への「とんでもない譲歩」が明らかに

2023年1月16日(月)18時15分
シリン・アリ(スレート誌記者)
マッカーシー下院院内総務

極右は異常事態に付け込み、マッカーシー下院院内総務(写真)に数々の要求をのませた TASOS KATOPODIS/GETTY IMAGES

<マッカーシー選出にかたくなに抵抗したのは同じ共和党内の保守強硬派たち。マッカーシーは下院議長の座を得るために、下院の議事進行に大きな影響を与えかねない6つの「代償」を払っていた>

4日間にわたり15回投票が行われた挙げ句、共和党のマッカーシー下院院内総務は1月7日、米下院議長に選出された。この座を得るためにどんな代償を払ったのか。

マッカーシー選出にかたくなに抵抗したのは共和党内の20人ほどの保守強硬派だ。彼らをなだめるため、マッカーシーは一連の譲歩をした。

その中には下院議長の権限を弱めたり、下院における極右の影響力を拡大するような下院規則の改定も含まれる。

新規則は9日に下院で採択され、今後2年間下院はこの新規則の下で運営される。議会発足時の新規則採択はおおむね形式的な手続きにすぎないため、あまり注目されないが、今回の新規則には下院の議事進行に大きな影響を与えかねない内容が盛り込まれている。

以下は現時点で分かっているマッカーシーの譲歩の中身と、それが下院の議事運営や審議に及ぼす影響だ。

■議長解任を簡略化

これまで下院議長の不信任決議案は多数党の議員の半数以上の支持がなければ提出できなかったが、規則改定で議員1人でも出せることになった。大もめにもめた末、議長になったマッカーシーだが、そのクビは簡単に吹っ飛びかねない。

■極右が主要委員会入り

共和党の極右は重要議案を審議する委員会に自分たちの仲間を送り込みたいと要求した。まだ正式には委員の顔触れは決まっていないが、既に主要な委員会のメンバー候補として極右議員の名前がちらほら挙がっている。

■下院の議事運営を変更

共和党が多数派となった以上、共和党に有利になるよう下院を変えるべきだ──マッカーシーはそんな要求にも折れ、手始めに下院議事運営委員会に共和党の保守強硬派の議席を増やすと約束した。同委員会はどの法案をいつ審議に回すか、また内容の修正を認めるかを決める権限を持つ。

■債務上限引き上げの条件

債務上限引き上げを含む予算案は大幅な歳出削減とセットでなければ、成立を認めない。これも極右がマッカーシーに迫った条件だ。結果的に社会保障とメディケア(高齢者医療保険制度)の予算がばっさり切られる恐れがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中