最新記事

カタールW杯

W杯から追放しろ! 米サッカー連盟のイラン国旗「加工」は正当な抗議か、侮辱か

2022年12月1日(木)17時30分
ジョシュア・マークランド
イランサポーター

アメリカ対イランの試合を観戦したイランのサポーター(11月29日) Yukihito Taguchi-USA TODAY Sports-Reuters

<イランで基本的人権のために闘う女性たちへの連帯を示すため、米サッカー連盟がイラン国旗から国章を取り除いた画像を掲載>

米国サッカー連盟は11月26日、サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会についてソーシャルメディアに行った投稿の中で、イランの国旗を、中央にある国章を取り除いた形で掲載した。これにイラン側は激しく反発したが、ネット上では「イランの方こそアメリカ国旗を燃やしているじゃないか」といったものから、「政治を持ち込むべきではない」といったものまで、さまざまな反応が起きている。

■【写真】米国サッカー連盟が投稿した「加工済み」のイラン国旗

イラン側はこれについて、国際サッカー連盟(FIFA)の規則に違反していると反発し、アメリカ代表を即刻ワールドカップから追放し、10試合出場停止とするよう求めている。イラン政府に近い同国のタスニム通信は、同様の主張をするツイートを投稿。だがツイッター上では、タスニム通信のアカウントのトップ画像が、まさに星条旗を燃やすイラストだったことへの指摘が相次いでいる。

■【写真】ツイッターで総ツッコミを受けたイランメディアの「トップ画像」

なおアメリカとイランは1次リーグで共にグループBに属しており、29日には直接対戦。アメリカが1対0で勝利し、決勝トーナメント進出を決めた。

米国サッカー連盟はCNNに宛てた声明の中で、イランの国旗を改変した画像については、24時間限定で掲載したと説明。「基本的人権を求めてイランで闘っている女性たちへの支持」を表明するためだったが、当初から(24時間が経過した後は)再び国章のある国旗を掲載する予定だったと述べた。

抗議デモの余波がカタール大会にも

イランでは、9月に22歳のマフサ・アミニが(スカーフの着け方が不適切だとして)道徳警察に身柄を拘束され、その後死亡したことをきっかけに、抗議デモが拡大している。イラン当局は抗議デモを武力で弾圧。デモ参加者を警棒で殴ったり、デモ隊に向けて実弾を発射したりする様子が動画に撮影されている。

だがこうした残虐な弾圧にもかかわらず、抗議デモが鎮静化することはなく、騒動の余波はカタールで開催中のワールドカップにまで及んでいる。イラン代表のこれまでの試合では、スタンドにデモ隊への支持を表明する横断幕や看板が掲げられ、サポーターもイラン政府の支持派と反対派に分かれ、両者の間で言い争いが起きている。

米国サッカー連盟による問題の投稿は、その後すぐに削除され、この「抗議」に関してアメリカ代表が処分されることはなさそうだ。FIFAはこの一件について、コメントを拒否している。

一次リーグ突破がかかった29日の試合の前には、この国旗画像の改変以外にもちょっとしたトラブルが発生。かつてアメリカ代表の監督を務めたユルゲン・クリンスマンが、イラン代表のカルロス・ケイロス監督とイラン代表について、反則すれすれのプレーを行っていると厳しく非難していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米輸入物価、9月は前月から横ばい 消費財価格がエネ

ワールド

「トランプ口座」は株主経済の始まり、民間拠出拡大に

ビジネス

米11月ISM非製造業指数、52.6とほぼ横ばい 

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中