最新記事

W杯

【W杯】イラン国民が米国勝利を祝う皮肉、「体制の犬」にされた選手の悲劇

Videos Show Iranians Celebrating U.S. Win in World Cup

2022年11月30日(水)19時06分
アンドリュー・スタントン

アメリカと全力で戦ったイランチームを待ち受けるものは Wolfgang Rattay-REUTERS

<W杯で宿敵アメリカに敗れたイラン。だがイラン国民は大喜び。それほど現政権への怒りは強く、現政権の「言いなり」の代表チームまでが憎悪の対象に>

サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグの試合で29日、イランは国際政治上の宿敵アメリカに2敗目を喫し、1次リーグから姿を消した。だが信じられないことに、イランではこの敗北に歓声を上げる人々の動画がソーシャルメディアに投稿された。

アメリカとイランがサッカーで対戦するのは、1998年フランス大会以来24年ぶり。決勝トーナメントへの進出がかかる緊迫の試合で対決した。

アメリカはイランを1対0で下し、競技の勝利だけでなく、「ならず者国歌」に対する象徴的な勝利も手に入れた。会場には多くのイラン人が詰めかけ自国チームに声援を送ったが、すべてのイラン人がイランを応援していたわけではないことも明らかだった。

ソーシャルメディアには、イラン国民が自国チームの敗北を祝う動画であふれた。イランはここ数カ月、22歳のクルド系イラン人、マフサ・アミニの死に端を発した政治的混乱に直面している。アミニは今年9月、ヒジャブを適切に着用せず服装規定に違反したという理由で警察に逮捕され、拘留中に死亡した。この事件は全国的な抗議行動を引き起こし、治安当局の手で数百人の死者を出す結果となり、イランでは反政府デモが続いてきた。

花火で敗北を祝う

アミニの故郷であるイラン西部クルディスタン州サゲズでは、一部住民がイランの敗北を祝っていた。イランのジャーナリストで活動家のマシフ・アリネジャドは、歓声があがり、花火が打ち上げられる様子を撮影した動画をツイッターに投稿した。

「これが今夜のイラン。アメリカのサッカーチームがイラン・イスラム共和国のサッカーチームに対してゴールを決めた瞬間。ここは、政権のヒジャブ警察に惨殺され、ジェンダー・アパルトヘイト政権に対する革命を引き起こした22歳の女性アミニの故郷サゲズ」

【動画】死んだアミニの故郷で上がったイラン敗北を祝う花火

この動画はツイッターで3万回以上再生された。

またイラン・インターナショナル・イングリッシュという団体は、イランの他の地域の同様の動画をツイートし、住民が歓声をあげ、花火を打ち上げ、車のクラクションを鳴らして祝う様子を紹介している。ある動画は、アミニの故郷と同じくクルド人住民が多いイラン西部の都市マリバンから投稿された。同団体はまた、首都テヘランからの動画も公開した。

【動画】アメリカの得点に湧くテヘラン

イランの活動家がツイートした別の動画では、少なくとも数十台の車が停止し、運転手が車から降りて拍手をしてアメリカ・サッカーチームの勝利を応援している様子が映し出されていた。

【動画】車から降りてアメリカの勝利に歓声を上げるイラン人ドライバー

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、半導体不足打撃で通期予想を下方修正 四輪販

ワールド

ロシアの限定的なNATO攻撃、いつでも可能=ドイツ

ビジネス

FRB、近くバランスシート拡大も 流動性対応で=N

ビジネス

再送-TOPIX採用企業は今期6.6%減益予想、先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中