最新記事

中国

世界の港を次々と支配する中国...国有「海運」企業が遂に「正体」を露わにし始めた

BUSINESS OR POWER?

2022年11月3日(木)13時41分
ディディ・キルステン・タトロブ(本誌米国版・国際問題担当シニアリポーター)
中国商船イラスト

PHOTO ILLUSTRATION BY NEWSWEEK; SOURCE IMAGES: FLAVIO COELHO/GETTY IMAGES, ZF L/GETTY IMAGES

<貨物だけでなく共産党員や軍事委員を大量に乗せた中国国有企業の商船が、中国マネーが投じられてきた世界の港に解き放たれる>

北海からエルベ川に入り、ドイツ最大の港ハンブルクを目指す大型貨物船リブラ号。甲板には色とりどりのコンテナがレゴのブロックのように積まれている。その姿は、世界の海や川を行き交う大型貨物船と何も変わらないように見える。

だが、リブラ号は単なる商船ではない。中国の国有企業・中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)が運航するこの船は、貨物だけでなく、中国共産党の下部組織や軍事委員も乗せている。船員も党に忠誠を誓い、国の経済力や国力の増進に努めることになっている。

中国自身も、リブラ号のような船を「浮かぶ要塞」と呼び、世界の海運と物流の支配をもくろむ長期戦略の最前線に位置付けている。これに対して欧米の一部諸国は、これらの船から展開されるスパイ活動や経済的脅迫行為、デジタル支配、軍事拡張努力に神経をとがらせている。

現在、コスコ・グループのように中国政府の息がかかった海運会社は、世界全体で100近くの港の権益を保有している。アメリカも例外ではない。今や5つの港(マイアミ、ヒューストン、ロングビーチ、ロサンゼルス、シアトル)の運営に中国資本が入っている。

「貿易は地球の循環器系のようなものだ」と、米海軍大学のアイザック・カードン助教は言う。「港はそのノード(節)の役割を果たす」

中国が世界各地の港湾に投資していることについて、世界最大の輸出国なのだから商業的に合理的な行為だと擁護する声もあれば、これは政治的、経済的、軍事的な利益を兼ねた行為であり、いつか軍事力を行使するときに利用される恐れがあると懸念する声もある。実際、中国資本が入った港の約3割は、中国海軍の艦艇を受け入れている。

党の指示に従い、祖国のために航行

本誌の取材とコスコ・グループの社内資料によると、中国共産党は同社内で活発に活動している。対外的には現代的なビジネスを展開しているように見えるが、国内では「党の指示に従い、祖国のために航行する」と明言しているのだ。中国の海洋プレゼンスを補強する役割を果たす企業はほかにもあるが、コスコ・グループはその中で最大だ。

世界の港湾の買収に関わっている中国企業は約30社あり、そのほとんどが国有だ。最大手はコスコ・グループと、中国の港湾運営大手の招商局集団。3番目は香港系の民間企業ハチソン・ポートだが、やはり中国政府の影響下にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、中東に防空装備と部隊追加配備へ 湾岸同盟国への

ワールド

WHOテヘラン事務所近くで攻撃、職員に負傷者なし=

ビジネス

ユニリーバ食品事業、マコーミックと統合合意 650

ワールド

米企業標的に報復攻撃へ、イランの革命防衛隊が表明 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 8
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 9
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中