最新記事

ミサイル落下事故

「ゼレンスキーは第3次大戦を始めようとした」 ──米保守派から非難相次ぐ

Zelensky Accused of Trying to Start World War III Over Missile Strike

2022年11月17日(木)14時21分
マシュー・インペリ

「NATOはウクライナと共にある」──ブリュッセルのNATO本部のスクリーンに映し出されたゼレンスキー(11月16日) Yves Herman-REUTERS

<ポーランドにミサイルが落下した事故を早々に「ロシアのNATOに対する挑戦」と決めつけ、反撃を促したことで、ウクライナの英雄は手痛いイメージダウンを被った>

11月15日にウクライナの隣国ポーランドの領内にミサイルが着弾し、2人が死亡した。今ではこれはロシアのミサイルを迎撃しようとしたウクライナのミサイルが誤って落下したものと見られているが、事故直後からこれをNATO加盟国に対するロシアの意図的な攻撃だと激しく非難したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は立場を失った。とくにアメリカの保守派の間では、「世界を新たな戦争に導こうとした」とゼレンスキーを非難する声が強まっている。

保守派コメンテーターのベニー・ジョンソンは「ウクライナは第3次世界大戦を始めようとしている。昨日ウクライナのミサイルがNATO加盟国に着弾し、罪のない一般市民が殺された。これについてウクライナの指導者たちは嘘をつき、ロシアのミサイルだと非難し、AP通信は何の疑問も抱かずにそれを記事にした」とツイートした。「ウクライナの指導部は嘘をつき、本格的な第3次世界大戦を起こそうとしたのだ。それが事実だ」

このツイートに先立ち複数の報道機関が、「ロシア製の」ミサイルがポーランド南東部のプシェドボフ近郊に着弾したと報じていた。一連の報道を受けてゼレンスキーは、ロシアとウクライナの間で続く戦争の「重大なエスカレーション」だと述べた。「これは集団安全保障に対するロシアの攻撃だ!きわめて重大なエスカレーションであり、行動が必要だ」とゼレンスキーは非難した。

バイデンが犯人ロシア説を否定

しかし15日夜から16日朝にかけて、アメリカ、ポーランドやNATOの複数の当局者が、ミサイルはロシアがNATO加盟国のポーランドに向けて意図的に発射したものだという見方に異議を唱えた。

ジョー・バイデン米大統領は15日、「その見解を否定する予備情報がある。調査が完了するまで言いたくない」と述べた。「(ミサイルの)軌道から考えると、ロシアから発射されたとは考えにくい。いずれ分かるだろう」

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領もミサイル着弾についてコメント。ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)によれば彼は、「今のところ、ロシア軍が発射したロケットだという証拠はない」とした上で、「ミサイルはウクライナが防空手段として使用したものであることを示す兆候が多くある」と述べた。

NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長も、着弾したのはウクライナが防衛のために発射したミサイルの「流れ弾」だった可能性が高いと述べた上で、「だがウクライナが悪いのではない。最終的な責任は、ウクライナに対して違法な戦争を続けているロシアにある」と付け加えた

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権の「敵性外国人法」適用は違法 連邦地裁

ビジネス

伊藤忠商事、今期2.2%増益見込む 市場予想と同水

ワールド

米予算教書、FBIや麻薬取締局の予算削減と関係筋 

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中