最新記事

NASA

「極めて理に適っている...」遠心力でロケットを「放り投げる」新方式、試験に成功

2022年10月18日(火)18時55分
青葉やまと

従来方式と比較し、打上げに要する燃料とコストの大幅な節減が見込まれている...... credit: SpinLaunch

<大量の燃料を必要としていた従来の打ち上げ方式に代わり、遠心力で「放り投げる」案が実用化へ向かっている>

米宇宙開発ベンチャーのスピンローンチ社が、ロケットを新方式で宇宙へと打ち上げる実験に成功した。地上に設置した大型装置で遠心力を発生させ、ロケットを上空へと射出する。

ロケットは高高度へと達したのち、残りの距離を自力で航行するしくみだ。従来方式と比較し、打上げに要する燃料とコストの大幅な節減が見込まれている。

同社はこの方式のテストを昨年から行なっている。最新となる10回目のテストが9月下旬に行われ、NASAなどのペイロード(積荷)を乗せた発射試験に成功した。

1万Gを受けて上空へ

試験ロケットは、ニューメキシコ州の民間宇宙港である「スペースポート・アメリカ」から発射された。

この施設は高さ33mの鉄製で、白い円盤を縦に置いたような形状をしている。内部には巨大なアームが備わっており、打ち上げ時には先端にロケットを掴んだまま高速で回転する。然るべきタイミングでロケットをリリースすると、遠心力によって上方へと放たれるという原理だ。

スピンローンチ社が公開した本テストの動画では、カウントダウンが0に達すると同時に、打ち上げ施設の上に設けられた煙突状の射出口からロケットが勢いよく飛び出す様子を確認できる。ロケットは地表の重力の1万倍となる1万Gを受けながら大気圏内に放たれ、その後再び地表へと落下した。

同社がロケットの試験を開始したのは昨年のことだ。同社のジョナサン・ヤニーCEOは動画を通じ、わずか11ヶ月間で10回目となるテストを成功させ、打ち上げの信頼性を確認することができたと自信をみせた。

>>■■【動画】新方式のロケット打ち上げ試験に成功、遠心力で宇宙へ ■■

帰還時は地面に完全にめり込む

今回射出したロケットは、「サブオービタル加速飛行試験機」と呼ばれるものだ。

サブオービタルとは、周回軌道へ乗せることを目的としていないことを意味する。試験でロケットは遠心力によって打ち上げられたのち、そのまま地表へと自由落下した。なお、スピンローンチ社のロケットは再利用型であり、本運用においても地表へと帰還することになる。

今回の落下時の衝撃は凄まじく、ロケットは地中深くに埋まることとなった。スピンローンチ社はロケットを掘り起こすのに重機を必要としたほどだ。打ち上げは9月27日であったが、試験成功の発表までに1週間以上を要した。これは地中からロケットを回収するのに時間を要し、搭載機器の無事の確認が遅れたためだとみられる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀「地ならし」で国債市場不安定化、入札

ワールド

EXCLUSIVE-中国のレアアース輸出、新規ライ

ビジネス

野村HD、成長フェーズ入りに手応え 2030年目標

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ 経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中