最新記事

中国

習近平 3期目続投が中国共産党「崩壊」の始まりとなる

A FRAGILE HOUSE OF CARDS

2022年10月19日(水)11時45分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

中国で規則や規範がなかなか守られないことは、全く驚きではない。

アメリカのような成熟した民主主義国家でさえ、同様の困難に直面することがある。それを明確に示しているのが、ドナルド・トランプ前米大統領の例だ。

それでも憲法による抑制と均衡が機能しない場合、民主主義国家なら少なくとも、自由な報道や市民社会、あるいは野党がそれを正してくれることを期待できる。トランプの場合もそうだった。

独裁体制の下では、規則や規範は民主主義体制よりもはるかにもろい。

まず、憲法や法にのっとって物事を進める信頼できるメカニズムがない。さらに権力者は、憲法裁判所などの機関を簡単に政治利用して、意のままに動かすことができる。

独裁体制下では、権力者の暴走を阻む二次的な力にも期待できない。中国には自由な報道や組織化された反対勢力がない。

習が憲法上の任期制限を憲法改正によって撤廃したように、権力者は規則が自分にとって都合が悪ければ、それを容易に変えることができる。

このように組織の規則や規範をないがしろにすることは、独裁的な指導者の利益になるかもしれない。しかし、彼らの体制にとって利益になるとは限らない。

その代表的な例が、毛体制下で中国共産党がたどった道だ。組織による一切の制約から自由になった毛は、次々に粛清を行って党に惨事をもたらし、共産党体制にイデオロギーの枯渇と経済的な破綻をもたらした。

鄧はそのような悲惨な経験を繰り返さないためには、規則に基づく制度が不可欠だと理解していた。だが、その鄧も利己心の前には信念を守り抜くことができず、自らが80年代に築いた党の体制が砂上の楼閣にすぎないことを露呈した。

習の3期目続投承認は、共産党にとって避けることができない崩壊の始まりでしかない。

©Project Syndicate

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾へのエネ安定供給を保証、「統一」受け入れなら=

ワールド

イスラエル軍、国連部隊誤射認める レバノンでガーナ

ビジネス

キオクシアHD株、ベインキャピタル系が一部売却 保

ワールド

イランの湾岸諸国都市部近郊への攻撃、米軍が原因=ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 4
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 5
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 6
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中