最新記事

ウクライナ戦争

大規模ミサイル攻撃で墓穴を掘ったプーチン、敗戦の足音

Why Russia's Airstrikes Could Signal a Defining Chapter in Ukraine War

2022年10月14日(金)12時43分
デービッド・ブレナン

ミサイル攻撃を受けたキーウの発電所。高層ビルはサムスン電子の社屋。Maxar Technologies/Handout/REUTERS

<ウクライナの戦勝ムードに「待った」をかけるはずの無差別ミサイル攻撃で逆に弱さをさらけ出し、最も避けたかったウクライナをNATOの集団防衛に加える案まで浮上させてしまったロシアに退路はあるか>

ウクライナ軍の反転攻勢やロシアにとって重要なクリミア大橋の爆発などでウクライナの戦勝ムードが色濃く漂い始めた10月10日、ロシアはウクライナ全土に大規模なミサイル攻撃を行った。だが見境のないこの報復攻撃で、ロシアは墓穴を掘る結果になった、との見方もある。

多数の民間人を殺し、都市インフラを次々に破壊する無差別攻撃に、国際社会は一斉に非難の声を上げた。ロシアの暴挙に怒った西側はウクライナ支援を強化、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はさらに崖っぷちに追い込まれている。

報復攻撃は「ロシアの弱さの現れ」だと、ウクライナ議会のオレクサンドル・メレシュコ外交委員長は本誌に語った。「地上戦で勝てないから、ミサイルで民間人を殺し、われわれを恐怖に陥れようとしている」

これまで支援を渋っていたヨーロッパの一部の国々も「ロシアの残虐行為にこれ以上目をつぶれないはずだ」と、メレシュコは言う。

形勢立て直しを目指したが

ミサイル攻撃を受けた都市の1つ、ウクライナ西部リビウのセルヒイ・キラル副市長は「プーチンはバカだ」と言い切る。「追い詰められて攻撃をエスカレートさせているが、これではウクライナ人の祖国を守る決意はますます強固になり、西側もウクライナ支援に向けて結束する」

ミサイル攻撃でもウクライナがひるまず、西側が結束を固めれば、ロシアはウクライナ軍の進撃を止めるために、さらに強引な手段に頼らざるを得ない。

プーチンは、ミサイル攻撃でウクライナ軍の攻勢に「待った」をかけて、形勢を立て直そうとしたと、国際危機グループのロシア担当上級アナリスト、オレグ・イグナトフはみている。「攻撃をエスカレートさせて、停戦交渉を有利に持ち込もうとした」

だが今の状況では、「同時に、あるいはごく短期間に、次から次へと荒技を繰り出すしか手がない」というのだ。

予備役を動員したのもそのためだと、イグナトフは言う。ロシアは否定しているが、西側の重要インフラに対するサイバー攻撃など、プーチンが密かに仕掛けているハイブリッド戦の激化もその一環とみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中