最新記事

ロシア

プーチン動員令、国内パニックだけじゃない深刻な影響

A Bad Hand for Putin

2022年9月26日(月)12時05分
エイミー・マッキノン、ジャック・デッチ、ロビー・グラマー(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)

志願兵まで戦闘を拒否

ロシア当局は見せかけの「住民投票」でウクライナ東部や南部を併合し、「国土防衛」を口実に侵攻をエスカレートさせる意向をちらつかせている。

ロシア政府内のタカ派はさらに強気で、外国の侵攻には核兵器の使用も含めあらゆる軍事オプションで対抗する構えだ。

「ロシアの領土への侵入は犯罪であり、自衛のためにはどんな手段を用いてもいい」と、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領は20日にメッセージアプリのテレグラムに投稿した。

西側当局者によれば、ロシアは侵攻初期に精鋭部隊が壊滅的な損失を受けた上、その後も増え続ける死傷者の補充に追われ、ウクライナに十分な兵員を送り込むことがますます困難になっている。

「ロシア政府は兵員不足を補おうと新兵募集に躍起になっている。ロシア軍の戦績は惨憺たるもので、ハルキウ(ハリコフ)の(ウクライナに奪還されたという)報を受けて、ロシアの多くの志願兵が戦闘を拒否するありさまだ」と、米国防総省の高官は19日に記者会見で語った。

米国防総省筋によれば、民間軍事会社のワーグナー・グループがタジク人やベラルーシ人、アルメニア人の雇い兵を募集し、ロシアの刑務所でも受刑者約1500人に戦闘参加を呼び掛けたという。だが若い未経験の兵士が多数死んでいると知り、多くの服役者が拒否しているもようだ。

一方、ウクライナ当局はロシアが住民投票実施を宣言したことを利用して、西側からさらなる武器援助を取り付けようとしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクは、前線から約300キロ離れたロシアの軍事施設などを攻撃できる陸軍戦術ミサイルシステムや最新鋭の戦車の供与、ロシアの特定の産業にさらなる制裁を科すことをアメリカに求めた。

プーチンを追い詰める包囲網は一層狭まりそうだ。

From Foreign Policy Magazine

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中