最新記事

イギリス

イギリスの社交場パブが大量閉鎖の危機 エネルギー高騰直撃で常連客が出費切り詰め

2022年9月3日(土)12時22分


カスバートソン氏によると、レッド・ライオン・アンド・サンは照明を減らして営業しており、この冬中に閉鎖を迫られる可能性も否定できない。

ロンドン南部でパブ3軒を所有するケリス・ドゥ・ビリエル氏は、1パイント(568ミリリットル)当たり0.2ポンド程度の値上げでさえ、常連客にはこたえると話す。「お客さんの多くは高齢で、自宅の暖房代を賄うのに苦心する状態だ」という。

パブで水を飲む

一般物価も高騰しており、英国民が外出に回せる額は限られている。7月の英消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は10.1%と40年ぶりの高水準を記録し、一段と上昇する見通しだ。

ビールの醸造に欠かせないホップや炭酸ガスなどのコスト高騰に加え、人件費の上昇もパブを悩ませている。

イングランド銀行(英中央銀行)は、英国経済が年内にリセッション(景気後退)入りし、その状態が来年いっぱい続くと予測している。「今後数カ月間で、人々がパブに行く頻度はぐっと減るだろう」とアナリストは言う。

カスバートソン氏によると、レッド・ライオン・アンド・サンの客は既に出費を切り詰めている。

「ランチの飲み物に、ビールではなく水道水を選ぶ常連客を1日に3人も見た。以前なら月にせいぜい1回しか見かけなかった光景だ」と述べた。

コロナ禍でパブやバーが休業を余儀なくされた際には、国が緊急支援に乗り出した。

だが、今回も同様の支援があるかどうかは、まだはっきりしない。政府は新首相が決まる5日まで、新たな政策決定を行わないとしている。

「夜になるとベッドに寝転がり、どうすれば商売を続けられるかと悩んでいる」とカスバートソン氏は語った。

(Humza Jilani記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マイクロプラスチックを血中から取り除くことは可能なのか?
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    ハムストリングスは「体重」を求めていた...神が「脚…
  • 10
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中