最新記事

ゼロコロナ

長期ロックダウンに怒る上海市民 検閲回避しSNSに抗議の声あふれる

2022年4月28日(木)10時52分
上海で防護服を着た作業員たち

上海でテクノロジー系の専門職に就くダニエルさんは4月1日、不意打ちを食らった。新型コロナ対策のロックダウンで居住する建物から出られなくなり、わずかな政府の配給と「微信(ウィーチャット)」のグループチャットに生活必需品の確保を頼らざるを得なくなったのだ。写真は上海で、防護服を着る作業員ら。23日撮影(2022年 ロイター/Brenda Goh)

上海でテクノロジー系の専門職に就くダニエルさん(31)は4月1日、不意打ちを食らった。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で居住する建物から出られなくなり、わずかな政府の配給と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」のグループチャットに生活必需品の確保を頼らざるを得なくなったのだ。

建物に入居する住民約200人が参加するこのグループを利用することで、ダニエルさんは肉や野菜、コメを共同購入できるうえ、上海市の新型コロナ対策に対する不満の高まりを目の当たりにすることができている。異議を唱えるチャットが日を追うごとに増えている。

「住民は怒り、言論の自由を制限する当局に疑問を唱えている。中国でこんなことは初めてだ」とダニエルさんは言う。

「政府や政治指導者、または削除された動画など検閲対象の物事を話題にするときには、ありとあらゆる隠語が使われている」

トムソン・ロイター財団は中国当局にコメントを求めたが、回答を得られなかった。

厳しいロックダウンでウイルスを根絶やしにすることを狙う「ゼロコロナ」政策の下、上海の市民2500万人は所得を失い、家族から引き離され、生活必需品の確保に苦労している。

厳重な検閲を受けるソーシャルメディアのプラットフォーム上にさえ、未曽有の数の苦情があふれかえっている。中国で最も人口が多く最も裕福なこの都市で、住民は婉曲表現を使ったり、上下逆さまにした写真を投稿したりして、検閲をかいくぐっているのだ。

当局に批判的な投稿の多くはすぐに削除されるが、中には生き残っているものもある。その中の1つはクラウドソーシングで作成されたスプレッドシートで、制限措置のせいで持病の治療を受けられずに死亡した人々の記録が記載されている。

このスプレッドシートは中国のソーシャルメディアからは削除されたが、上海に住むリネット・リムさん(31歳)によると、ユーザーのIPアドレスを匿名化してファイアーウォールを回避できる仮想専用通信網(VPN)を通じて今でも見られる。

「ソーシャルメディア上の運動や、検閲に逆らうための協調行動がこのレベルに達するのは前代未聞だ」とリムさん。自身は禁止されているフェイスブックやツイッターにVPN経由でアクセスし、ウィーチャットのメッセージを翻訳したものを頻繁に投稿している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の不動産投資・販売、1─11月軒並み落ち込み拡

ビジネス

日銀短観、景気は緩やかに回復との政府認識と齟齬ない

ワールド

NZ政策金利、現行水準にしばらくとどまる見通し=中

ビジネス

MUFG、米プライベートクレジット市場で新ファンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中