最新記事

ミャンマー

やりたい放題のミャンマー軍事政権──国際社会はこちらの「惨状」も見過ごすな

2022年4月28日(木)17時06分
ナイ・アウエ・モン(HURFOMプログラム責任者)、マギー・クアドリーニ(人権活動家)
避難民

モエイ川沿いの避難民(4月3日)GUILLAUME PAYEN-ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<軍事政権による民間人、人権団体への残虐行為が発生しているミャンマー。化学兵器使用も疑われている>

4月4日の朝、ミャンマー南東部カイン州(旧カレン州)のコーカレイ地区で暮らす住民は、激しい砲撃で目を覚ました。ミャンマー軍事政権の政府軍による攻撃だ。

17歳の少女が砲弾に当たって病院に運ばれる途中で死亡し、ほかにも4人が重傷を負った。ミャンマー南東部では、民間人に対する政府軍の執拗で激しい攻撃が続いている。

少数民族カレンの反政府組織カレン民族同盟(KNU)の軍事部門であるカレン民族解放軍(KNLA)によれば、KNLA支配地域のキェイクとパイカルドンは政府軍の戦闘機による攻撃を繰り返し受け、この1カ月でおよそ600人の住人が避難せざるを得なくなった。

ミャンマーでは、こうした痛ましい出来事が相次いで起きている。政府軍は、機関銃や高性能の兵器で民間人の居住地域を攻撃することを躊躇しない。政府軍が化学兵器を用いたという報告もある。

ミャンマーの軍事政権は、罪のない人々を意図的に標的にしている。コーカレイ地区だけでも、3月末までに合計1万2177人が強制的に住居を追い立てられた。

無差別攻撃だけでなく、現金や所持品の没収も

「モンランド人権基金(HURFOM)」は数十年間にわたり、ミャンマー南東部、特にモン州とカイン州、そしてタニンダーリ地域の人権侵害を調査してきた。

同基金によると、昨年2月1日のクーデターで国軍が全権を掌握して以降、民間人への残虐行為が著しく増加しているという。

民間人は、無差別攻撃の標的になっているだけではない。検問所で現金や所持品を没収されることも珍しくない。

軍事政権に奪われたオートバイは少なくとも500台に上る。携帯電話を没収されて、軍事政権に対抗する民主化運動に関わっている証拠がないか調べられることも多い。

所在が分からなくなる人も増えている。人権活動家は攻撃にさらされ、しばしば国外に亡命せざるを得なくなっている。HURFOMによれば、3月末までに67人以上が逮捕され、50人以上が不法に身柄を拘束され、23人が負傷し、8人が死亡したという。

軍事政権の攻撃は子供たちの命も奪っている。3月29日、政府軍とKNLAが衝突した際、政府軍がモン州タトン地区の村を長距離重砲で砲撃した。これにより8歳と6歳の兄弟が命を落としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ休戦交渉難航、ハマス代表団がカイロ離れる 7日

ワールド

米、イスラエルへ弾薬供与停止 戦闘開始後初=報道

ワールド

アングル:中国地方都市、財政ひっ迫で住宅購入補助金

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中