最新記事

チョルノービル

ロシア軍、チョルノービル原発周囲を地雷で包囲か 「サプライズがあると思え」

2022年4月15日(金)17時45分
青葉やまと

チョルノービル(チェルノブイリ)原子力発電所の敷地内にウクライナ国旗を立てる兵士...... Ukrainian Armed Forces General Staff/REUTERS

<侵略者たちが去ってなお、原子力発電所の職員たちは危険にさらされている>

チョルノービル(チェルノブイリ)原子力発電所から撤退したロシア軍だが、敷地に地雷を残していった可能性が浮上した。撤退後、敷地内に地雷が仕掛けられていることを示唆するメッセージが複数発見されている。

レジスタンスによる報道機関『ウクライニアン・ウィットネス』が立ち入り制限区域内を検証したところ、地雷の存在をほのめかすメッセージが複数確認された。「赤い森」に放置された大型車両には、「この道は地雷が仕掛けられている」との落書きが残されている。ロシア兵が撤退時に残したものとみられる。

別の場所の壁には、「サプライズがあると思え、地雷を探せ」との文言が刻まれていた。ロシア軍のシンボルである「V」「Z」の記号が添えられ、笑顔を浮かべた爆弾のイラストが共に描かれている。

メッセージを受けてウクライナ当局は、ロシア側が目に見えない「地雷の迷路」を残した可能性があるとみている。特定のルートを通過する分には安全だが、そこから外れると起爆するよう罠が仕掛けられているとみられる。


線量高い現地にさらなるリスク

英メトロ紙は、ロシア軍が荒らした敷地周辺はすでに放射線レベルが上昇していることに加え、地雷により「さらなるリスク」を職員たちが被るとみる。

ウクライナ・立入禁止区域管理局のマクシム・シェフチュク氏は英『i』紙に対し、地雷を避けるため、「現在のところ人々は、よく知られたルートとアスファルトの舗装路だけを使用しています」と述べた。

現在のところ犠牲者の報はなく、地雷の予告は単なる脅迫に留まる可能性も否定できない。しかし、ロシア軍は実際にウクライナ各地に地雷を仕掛けており、チョルノービルにも罠が及んでいたとしても不思議ではない。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「彼ら(ロシア軍)は領土全域に地雷を仕掛けている」と述べ、国民に警戒を呼びかけている。

安全性が確認できない状況においては、原子力発電所の管理要員の交代および今後現地調査を行う意向である国際原子力機関(IAEA)の活動は慎重にならざるを得ず、影響が懸念される。

占領下では職員の機転も ロシア軍から燃料盗む

同施設に関してはこのほか、制圧下での急迫の状況が明らかになってきた。ロシアの占領軍は侵攻後間もなく、チョルノービル原子力発電所を制圧した。被曝により兵士に健康上の問題が確認されたことで、4月上旬に撤退している。

緊迫の35日間のなか、電力の喪失によって緊張はピークに達した。ロシア軍が現地に通じる唯一の送電網を遮断したことにより、3日間の停電に見舞われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中ロ軍用機の共同飛行、「重大な懸念」を伝達=木原官

ワールド

ベネズエラ野党指導者マチャド氏、ノーベル平和賞授賞

ワールド

チェコ、新首相にバビシュ氏 反EUのポピュリスト

ビジネス

米ファンドのエリオット、豊田織株5.01%保有 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中