最新記事

ウクライナ情勢

「ゴールポスト」動かしだしたロシア 行き詰まるウクライナ侵攻

2022年3月29日(火)11時11分
ウクライナのマリウポリに侵攻したロシア軍

ロシアはプーチン大統領がウクライナに勝利を宣言して面目を保てるよう、「ゴールポスト」を動かした──軍事の専門家の間でそうした見方が出ている。ウクライナのマリウポリで24日撮影(2022年 ロイター/Alexander Ermochenko)

ロシアプーチン大統領がウクライナに勝利を宣言して面目を保てるよう、「ゴールポスト」を動かした──軍事の専門家の間でそうした見方が出ている。

ロシアは2月24日、陸、海、空からウクライナに攻撃を仕掛け、首都キエフまで迫った。ウクライナと西側諸国は侵攻の狙いについて、ゼレンスキー大統領率いる民主政権を転覆させることだと指摘していた。

しかし、ロシア軍高官は今月25日、真の目的はウクライナ東部ドンバス地域の「解放」だと述べた。この地域では過去8年間、ロシアの支援を受けた親ロシア派武装勢力がウクライナ軍と戦闘を重ねている。

ロシアのセルゲイ・ルドスコイ第1参謀次長は「作戦の第一段階の主目的はおおむね遂行された」と発言。「ウクライナ軍の戦闘能力は大幅に減退した。これにより、われわれは主な目標であるドンバスの解放を達成するための努力に注力できるようになった」とした。

プーチン氏は、ウクライナがドンバスでロシア系住民の「ジェノサイド(集団殺害)」を行っていると、証拠を示さずに主張してきた。ロシアが長年繰り返してきたウクライナ批判の中で、この地は特別な存在となっている。

しかし、ドンバス全体の掌握が当初の目的であったとすれば、ロシアははるかに限定的な攻撃を仕掛け、北、東、南からウクライナに侵攻することによる労力や損失を免れることができたはずだ。

欧州でかつて米軍司令官を務め、現在は欧州政策分析センター(CEPA)に所属するベン・ホッジス氏は「彼らが計画していたことすべてに完全に失敗したのは明白だ。だから今、勝利を宣言できるように目標を定義し直している」と指摘。

「彼らは明らかに大規模な攻撃作戦を続ける能力がない。兵たんに問題があるのは誰の目にも明らかであり、人的資源にも深刻な問題を抱え、予想だにしなかったほどの強い抵抗に遭っている」と述べた。

防戦から攻勢へ

ロシアが言う「特別軍事作戦」による代償は大きい。ルドスコイ第1参謀次長は25日、これまでのロシア兵の戦死者は1351人だと述べた。ウクライナ側は、実際の人数はその10倍だと主張している。

検証可能な写真や動画を元に両軍の装備の損失を記録しているオランダの軍事ブログ「Oryx」によると、ロシアはこれまでに戦車295台、航空機16機、ヘリコプター35機、船舶3隻、燃料輸送列車2本を含む1864の装備を失った。ウクライナ側については戦車77台を含む540の装備の損失を確認している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日経平均の底堅さは本物か、「離れ小島」リ

ワールド

EU議員団が訪中、中国製品の安全性と市場開放で圧力

ビジネス

午後3時のドルは158円後半でほぼ横ばい、イラン情

ワールド

インド中銀、8日は金利据え置きか 中東情勢見極め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中