最新記事

ロシア

ロシア街角にリボン出現...規制下の反戦デモ、創意で当局かわす

2022年3月28日(月)12時10分
青葉やまと

反対運動のシンボルとして提案されている新生ロシア旗のウェブサイト

<白紙を掲げただけで連行されるようになったロシア。市民は安全な反戦運動に頭をひねり、当局との知恵比べを展開している>

ロシア各地の街角で、真新しい緑のリボンがいくつも風に揺れている。3月上旬ごろから都市部を中心に大量に出現するようになっており、モスクワや北西部のサンクトペテルブルク、そして中部の大都市・エカテリンブルグやバルナウルなど、複数の都市でみられるようになった。

これらのリボンはみな、ウクライナ侵攻に反対するロシア人市民による無言の抗議メッセージだ。その存在は当初、ロシア国内のTwitterユーザーを中心に話題となった。その後、3月7日に公開された1本のTikTok動画をきっかけに、ロシア国外でも広く知られるところとなった。

@natashasrussia

Another day in Saint-Petersburg Russia

Human - Rag'n'Bone Man


動画はサンクトペテルブルクの中心街で撮影されたもので、至るところに展開する警察と、彼らに連行されるロシア市民たちの生々しい様子を記録したものだ。しかし、厳戒態勢の物々しい空気感だけでなく、意味ありげに映り込むグリーンのリボンが視聴者たちの興味を惹いた。

動画では10秒前後の時点で、緑のリボンを大量にもった男性を確認できる。続いて18秒ごろの階段の手すりに、そして27秒ごろには橋の欄干に、それぞれグリーンのリボンが写されている。風に揺れるこれらの小さなリボンは、デモが規制されたロシア国内において、それでも反戦を訴える市民たちが残したものだ。

白紙を掲げても逮捕

ロシアでは3月4日から反戦デモが違法となり、参加者は最大で15年の懲役刑に処される。これを受け市民たちは、規制を回避しながら戦争反対を訴える手法を模索してきた。

有力視されたのは、白紙のカードを掲げ街頭に立つという無言の抗議活動だ。だが、このところは白紙のカードでさえ反戦のメッセージとみなされ、身柄を拘束される事態が多発している。

そこで現在、より安全に平和を訴える方法として、都市の各所に緑のリボンを結ぶ抗議手法が実行されるようになった。意思に賛同したい人々は緑のリボンを街中の柵や手すりなどに結び、すばやくその場を離れるだけだ。

通常、何かのシンボルとしてリボンを用いる場合、服などに着用して意思を表示するのが一般的だ。しかし、これでは当局に拘束される原因となる。そのため、着用ではなく街頭に結びつける方法が考案された。当局が風にはためくリボンを発見する頃には、あたりに活動家の姿はなく、逮捕したくとも不可能という寸法だ。

英ミラー紙は動画を取り上げ、反戦の意思表示をする「巧みな手法」だと報じた。動画には「彼ら(当局)は緑のリボンを口封じすることなどできない」など、活動を支援するコメントが多く寄せられている。

・他のリボンの例

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中